第七話 撃退
壁を破壊して部屋に入ってきたのは、黒髪と黒い瞳をした女性だった。その後ろには、3人程の人影があった。
「…あら、一体何しに来たの?破壊の女神:ザディア」
フィーレアは鋭い視線を送るが、当の本人であるザディアは涼しい顔をしていた。
「おいおい、昔はあんなに仲が良かったのに冷たくないか?」
「今は今、昔は昔。それよりも、その後ろにいる人達は何かしら?ろくに挨拶も出来ないようだけど?」
ザディアは、「それは失礼したな…おい、名乗れ」と言って後ろの3人に命令した。
「私はべネリネよ」
彼女は長く伸ばした白髪に赤い瞳をしており、口元をマスクで隠している。
「僕はラディス、よろしくね?」
彼は華奢な身体をした少年で、目は細くて閉じているように見える。
「我は、カルヴァディア…」
ソイツは、この中で特に異質な存在で体中が機械でできている。
「そういえば、さっき何しに来たって聞いたよな?」
「ええ、聞いたわよ?」
「ついでに答えてやるよ…軽い試験運用だ」
ザディアの言葉と同時に、後ろにいた3人が一斉にこちらへ駆け出してくる。
ベネリネはイムを背中に隠したレーヴァヘ
ラディスは勇者のガルドへ
カルヴァディアは氷の剣士であるアルファと銃使いのフロンティアのもとヘ…
「《ホーリーアロー》」
「うふふ♪」
レーヴァは、背後に6つ程の魔法陣を展開して光の矢を射出するが、どこから取り出したのか、べネリネは黒い鞭を手に持っていた。その黒い鞭が光の矢に触れた瞬間…光の矢が消失した。
「なっ」
その現象に驚き、一瞬だけ判断が遅れたレーヴァの元へべネリネの左手が迫る。
「ふふ♪ソウルスティー…」
「《ゲート》」
その手は、レーヴァの目の前に出現したゲートの中に入り、その中程でゲートがベネリネの左腕ごと消える。
「…ゲイル」
「もう、油断しちゃ駄目だよ?」
ゲイルはレーヴァに対して注意した後、床をのたうち回っているべネリネに目を向ける。
「グァッ!?」
「《グラヴィティーホール》」
ゲイルの重力魔法によってミシミシッど音を立てて床にめり込むべネリネ。一方、ガルドは…
「ぐう…」
「どうした、そんなもんか?」
ラディスとガルドはお互いにオレンジ色の闘気を纏って取っ組み合いになっているが、ガルドの闘気の方がラディスの闘気より明らかに色も濃く量も多い。当然の事ながら、ラディスはかなり押され気味だった。恐らく、ラディスは複製系のスキルを持っているのだろう。
(闘気は所持者の想いが強ければ強い程身体能力を強化するから、ガルドとはもの凄く相性が良いんだよね…)
そして、アルファはというと…
「グ、ガガガ…」
「ガリゴリ…」
アルファは、“氷漬けにした”カルヴァディアの上に座って、退屈そうに足をバタつかせながら自身が生み出した氷を食べており、フロンティアは「私にも見せ場くらいくれよッ!!」とアルファに対して軽口を叩いていた。
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