会社が急に倒産した話③
ランチに誘ってみたけれど、営業のおっさん達はみんなそれどころじゃなさそうで、結局自分の島の4人+A子ちゃんとお昼を食べに行くことに。後から聞いた話だと、他のデザイナーの子と営業のおっさんたち(合併前の会社からの継続組)もどこかで話し合っていたそうだけど、お通夜みたいな感じだったらしいので、A子ちゃんをこちらに連れてきたのは正解だった模様。先行き不安な話ばっかり聞かされたら益々泣きたくなるしね。
ちなみにほかのフロアの事務の人たちも誘ってみたけど、よくこんな時にそんなこと言ってられるなって感じで軽く引かれた。解せぬ。
内勤の私たちは平日昼間にどこかでゆっくりランチするってこともないので、わざわざ電車に乗って2駅先の肉料理のお店に行った。ランチがお得でおいしいらしくて、実は前から来たかったんだけど、時間が合わなくて来れてなかった。災い転じて福となす。フヘヘ。
ちょうどオープン時間に合わせて人が並び始める頃到着することができて、私たちは2番目に案内された。窓際の落ち着いた半個室になっているテーブルで、注文したランチセットが到着するのを待つ。
待ってる間はさすがに会社の話になった。「いきなり倒産するとかアホか」、「会長マジでアホ、〇ね」、「会長と愛人(?)の実はあの時はあーだった」、「ほかのフロアの人たちのマウントの取り合いがどーだった」、「総務部長はお金はあるのに性格が悪くてモテない」とか愚痴やどうでもいい話をした気がする。メンタル強めの4人に悲壮感は一切なかった(笑)
そんな話をしていたら料理が運ばれてきた。ミディアムレアの焼き具合のお肉が鉄板の上でじゅうじゅう音を立てている。柔らかくも噛み応えのあるお肉は、甘辛いタレと絡んで口の中で肉汁をあふれさせる。
ふっくらと盛られた真っ白なご飯。お肉をのせればご飯の甘みとタレと肉汁の塩気で、何杯でもいけてしまいそう。もちろんお味噌汁も外せない。
目の前に出てきたお肉を美味しい、美味しいと言いながら食べる。至福。
A子ちゃんも会社から出るときは泣いていたけれど、お肉をおなかいっぱい食べて、会社の愚痴を言っていたら元気が出てきたようで、私たちが最後に「あんなクソ会社のことはさっさと忘れて次!次!」と言ったら笑っていた。
まじめな話、他県から出てきて、初めに働いた会社がいきなり倒産するなんて不運以外の何物でもないけど、相談できる先って意味で学校に籍が残ってる時期でまだマシだったなと思う。デザイナーとして仕事を探すのは難しいらしいから。実家に帰るために越してきたばかりの家も引き払わなければいけないだろうし、きっとこの先しばらくは大変だろう。
笑ってる私たちだって明日からの事はなーんにも決まってないのだ。
みんなそれぞれ家賃だって払っているし、月々の支払だってある。突然の倒産で離職票どころの話じゃないから、雇用保険もいつもらえるか確定じゃない。
でも、ウジウジ考えてたってどうしよもない。
おいしいものを食べて、元気を出して、これからのことはそれから考えればいい。
今やれることをやるしかないんだから。
A子ちゃんのほろ苦い記憶にお肉は偉大ってことぐらいは残ればいいなと思いながら、私たちはその日笑って解散した。
次回はその後のことなど