第62話
今のは一体なに?
「アリィ?そんなに食べたかったのか?ほら。」
さっきまでハリネズミが乗っていた私の手のひらにぽんっとクレープが置かれる。
顔を上げると、クレープを頬張ったリオが美味いぜと爽やかに笑っていた。
「えっ!ちょっ?ちが...!この手は早くほしいの催促の手じゃなくて...!!」
「くくっ、アリィは意外と食いしん坊だな。」
違いますーー!ハリネズミがいたんですーー!
と叫びたかったけど、あのハリネズミは私の空想の産物のようなものだから、もしかしたらリオには見えていなかったのかもしれない。
「くうぅ......。」
「なんだ?そんながっつくほど美味しいか?」
言い訳すらできなく顔を真っ赤にしてクレープをパクつく私にリオが嬉しそうに聞いてくる。
いや、美味しいんだけど!美味しいんだけど!
ううう、美味しいです......。
貴族街とは違って平民が沢山住むこの界隈ではクレープを片手に歩いても無作法ではなく、誰も気にしない。前世と同じ、とまでは言えないが常にマナーがつきまとう貴族街にいるよりかは幾分とリラックスできる。
私達はクレープを味わいながら、市場や雑貨屋のある通りを歩いていた。
「どこか入りたい店はある?」
クレープを先にたいらげたリオが私の片手を引きながら話しかけてくる。
いきなりの街探検、いや、で、でででででデート...のお誘いだったので、行きたい店など急には思いつかないけど、せっかくテオ兄様の監視もいない状態で街中に来たのだから、どこか気になる店があったら寄ってみたい。
「うーん。そうね。普段は入れない...じゃなかった、ビーア様たちとは普段入らない店に寄ってみたいかなぁ。ぬいぐるみや可愛い服が売っている店はよく行くのだけど。たとえば......あっ、あんな店!」
「へぇ。文具店か。」
何故かじっと見てくるリオ。
「なぁに?」
「いや、こういう時って装飾品系の店とか服屋とかさ、身につけれる物を売っている店に心ときめかせるのが女子なんだろうけど、そこを敢えて文具店選ぶところがやっぱりアリィだよなぁって感心してたとこ。」
「色気がなくて悪かったわね。」
むぅと口を尖らせると、ぷぷぷと笑いながら悪い悪いとリオが謝ってきた。
「だから好きなんだよ。」
「え?何か言った?」
「いーや、何にも。ほら早く食べて中に入ろうぜ。」
さすがに店内でクレープは食べられないので、店に入る前に食べ切らなくてはいけない。
焦ってクレープを食べていると、くいっと顎を持ち上げられた。
「アリィ。口元にアイスがついてる。」
顎に当てられていたリオの指がすっと移動して口元に触れた。
「ななななななな......!?」
「ほら、綺麗になった。」
「あ......。」
そ、そっか。アイスがついたのを拭き取ってくれたのね。
私ったら過剰に反応しすぎ。
「あ、ありがとう.....。」
「ああ。じゃ、行こう。」
にっと笑ったリオの微笑みは、空から降り注ぐ太陽の光で照らされて本当に綺麗に見えて。
私は一瞬息をするのを忘れてしまったのだった。
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