第59話
「.........っ。」
「咄嗟に否定できないってことはそうなんだな。」
真顔でじっと見られ、半開きになった私の口はまるで固定されたかのように言葉を発することができない。
「アリィ。」
寄りかかっていた欄干から体を離し、リオが何故か私に手を差し伸べる。
「?」
瞬きしながらその手を見ていると、急にぐいと右手首を掴まれた。
「行こうぜ。」
「へ?行くってどこに?」
キョトンとしながらリオの顔を見上げる。すると何故かリオは私から顔を逸らしてぶっきらぼうに言い放った。
「デートだよっ!」
は!?
何!?今リオは何て言った!?
「で、でででで........!?」
「ばっ、馬鹿!声が大きいっ!!
何回も言わせるなよっ。街を遊び回れば.....その、おまえの気分もかわるだろっ?」
声が大きいって慌てているリオの声のほうが大きいしっ。
長年の友人からまさかでででで、いや、デ、『デート』の言葉が出てくるなんて思っても見なかったのでひたすら動揺しちゃったじゃない。
(あれ?顔を背けているリオの耳が真っ赤だ。)
もしかして照れてる?
「リオ......。あなたもしかして私のこと」
「.........。」
ゆっくりとこちらを振り返る翠色の瞳と目が合った。吸い込まれそうな澄んだ彼の瞳は私を映して微かに揺れている。
「心配してくれてるのね!!ありがとおぉぉ!!
何これ?幼馴染ってやっぱりもう宝!?宝だよね!?
ああああっ!行くよっ!行っちゃうよ!なんなら王都一周ツアーとか申し込んじゃう!?」
「一周はやめとけ。日が暮れる......おまえのそういう鈍いとこも好きな救いようのない自分が恨めしいよ。」
「え、何か言った?」
「別に。」
感極まり大量の涙を流しながら、リオの手を取りぶんぶんと振りまくるテンションの高い私とは対称的に、なぜかリオはがっくりと項垂れていた。
あれ?どうしたの、リオ?