第56話
ブックマークや評価してくださった皆様ありがとうございます。
おかげさまで目標にしていた総合評価1000ポイントを達成できました。
先日お伝えしていた通り、皆様への感謝の気持ちとして番外編を投稿していきたいと思います。
プロットはすでに頭の中にできているので、今週頑張って書き上げますね。土曜日からの掲載を予定しています。楽しみにしていてください(^^)。
「とてもユニークな制服なんだね。他の女性たちとは違う個性ある唯一無二の存在の君に相応しい。」
いつのまに復活したのか、フリッツが目を甘く細めてエルケの手を取り恭しく彼女の甲に口付けようとしてきた。
こう言うとすごく気恥ずかしい甘々な描写だが、実際は、先程の竹箒の跡がフリッツの頬に真っ赤に着いており、エルケはエルケで手を取られる前にきっちりと掃除用と思われる青いゴム手袋を装着していてとても滑稽な絵図である......。
しかし、あの一瞬でゴム手袋を装着するとは、自分の侍女ながらあっぱれな早技だわ。
普段エルケは、ゴム手袋などはめないなのできっとあれもお仕着せのポケットから引っ張り出したものなのだろう。
「ふふっ。鉄壁のガードだね。恥じらう君も可愛いよ♡
ん?あれ?あれれれ?」
ゴム手袋ごしにエルケにキス(あのぅ、それ掃除用手袋...)をしていたフリッツが背後から何者かの腕に襟首を掴まれ、ひきずられていく。
フリッツの姿が保管書庫の中に消えると、扉はパタンと閉まってしまった。
「......いい加減にしろ。早く仕事をせぬか。」
書庫の中から誰かの絶対零度の声が漏れ響く。
「おやおや。数分かまってあげなかったからってヤキモチかい?大丈夫だよ、アル。僕は君のことも忘れていない。愛し......」
「むしろ私は忘れろ。やるべき仕事を思いだせ。」
「君ってほんと昔からノリ悪いよねぇ。」
クスクスと笑うフリッツの声が2人分の足音とともに遠ざかっていく。
そういえば、御者がこの書庫をよく使うのは第一王子アルフォンス様とフリッツだと言っていた。だとしたら、フリッツがアルと呼んでいた相手、書庫の中から聞こえた声の主は第一王子アルフォンス様だったのかもしれない。
「エルケ、ご挨拶したほうが良かったのかしら?」
そう言って振り返るとエルケは何故か跪いていた。
ゴム手袋ははずして公爵家の倉庫ととつながっていないほうのポケットに慌てて押し込んだようで少しはみ出している。
彼女の横には竹箒がまるで騎士剣のように置かれているが一体どうしたんだろう?
「どうしたの?エル.....」
急に跪いたエルケに問いかけた言葉は、彼女の向こう側にいるある人物を見つけて最後まで言うことができなくなった。
どうして彼がここに?
魔法で飛んできたのだろうか、ボサボサな銀髪がさらに乱れている。
長めの前髪と眼鏡との隙間に垣間見える眉は険しく寄せられており、魔力を急激に消費させたからか口元からはやや荒い息をついていた。
「アリシア......っ!!」
「は、はいっ!?」
ガッと肩を掴まれ、私よりかなり背が高い彼の顔を見上げると、銀縁の眼鏡のレンズには驚きに目を見開いた自分が映っていた。
◇ブックマークや☆評価で応援いただけたら嬉しいです(^^)。