第49話
陽の光を反射して目も覚めるような赤い髪が煌めく。
私が体勢を立て直したのを見て、相手はゆっくりと腕を離した。
「エアハルト様。」
「やはり友人同士は似るものなのか?シャルロッテも確かかなりの瞬足だったな。」
いや、それは狂剣士モードの彼女のことでは?伯爵令嬢姿の彼女はドレスで走らないと思う。うん。
あっはっはと笑う目の前の美丈夫の登場に目を瞬かせていたが、あっと気付いて慌てて最上級の礼をする。
「し、失礼いたしました。このような姿をお見せしお恥ずかしいかぎ......」
「気にしていない。公爵令嬢が走る姿など滅多に見れるものでもないしな。興味深かったぞ。それよりも走るぐらいの何かがあったのか?」
公明正大、彼の瞳には何かを裏から探るような色はない。何かあれば対処する、そんな気心が見えた。
「まぁ、言いたくなければ言わなくてかまわないがな。」
髪や目の色こそ違うが、ニッと清々しいほど爽やかに笑う口元はレオンハルト様にそっくりだ。
なぜならば、この方はこの国の第二王子、エアハルト・シーガーディアン様。
ハインツ従兄様と同じぐらい高い身長と、海の神の子孫と言われる王族としては珍しい赤い髪、赤紫の瞳の持ち主だ。
エアハルト様のお母様は現国王の序列2番目のお妃様で、そのお母様の出身地は隣国ルビネス。
灼熱の国、そして太陽の国と言われるように大半が砂漠に覆われた常夏のようなその国の民は赤い髪が産まれやすいらしく、第二王妃様も赤い髪、そして赤い目をしていらっしゃる。
エアハルト様の顔立ちは現国王によく似ていらっしゃるが、髪はお母様の血を受け継いだらしく彼も燃えるような赤い髪をしていた。そして瞳は赤に水色をいれたような紫色だ。
第一王子アルフォンス様はレオンハルト様と同母のご兄弟で銀の髪や青い瞳はお二人ともよく似ていらっしゃるが、お顔立ちは少し違う。
どちらかと言うと、異母兄弟であるエアハルト様のほうが、レオンハルト様のお顔立ちと似ているのではないだろうか。
どっちにしろ御三方ともイケメンである。
だって、この方も乙女ゲーム『5人の王子と謎めいた王宮』の攻略対象なんだもの!
............脳内で乙女ゲームと叫んでさっきのことを思い出したわ。エアハルト様や木にぶつかりそうになって一瞬忘れかけていたけど。
嫌われようとしても、あらゆることを試みてもなかなか叶わない婚約破棄。
これがゲームシナリオの強制力なのだとしたら。
レオンハルト殿下とのお茶会で私との間に置かれる書物の間仕切りは、心の奥底でレナーテ様を慕うレオンハルト様の無意識の行為なんだろう。
「やっぱり嫌いなんじゃないですか......。」
前世で見たレオンハルト様のスチルに似ているエアハルト様の面差しを見ていると、急に目の前がぼやけてきた。
「は?嫌いって何がだ?
アリシア嬢?大丈夫か?」
慌てるエアハルト様に申し訳ないと思っているのに、ポロポロと溢れ出した涙は全く言うことを聞かなくて、全然止まってもくれなくて
自分でもよくこんなに目からでてくるものだなと呆れるぐらいに、とめどなく流れていった。
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