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王子と私の婚約破棄戦争  作者: 翡翠 律
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第45話


「アリシアお嬢様......。」


 後ろから遠慮がちにかけられたエルケの声にはっと我に帰る。


「先日最新式の糸切りバサミを入手したのですが、さっそく性能を確かめる時が来たようですね。」


 シャキーンとお仕着せのポケットから銀色に輝く糸切りバサミをとり出したエルケがそれを太陽に掲げる。


「いや、ちょっと待って!あなた一体何を切る気?」


「殿下の殿下を。」


「オヤメナサイ。」


「......ちっ。了解致しました。」


 不満気にハサミをポケットにしまった時に舌打ちしたね?つまりちょっと本気だったね?


「あのね、エルケ。

 レナーテ様が殿下と親しくされていらっしゃってもおかしくはないのよ。」


 レナーテ様はエルドナドル公爵夫妻がお年を召してから産まれたご令嬢で、エルドナドル公爵は現国王の叔父にあたる方だ。

 ガーラント公爵家よりも王家に近い関係であるエルドナドル公爵家のレナーテ様が城内に出入りしていて歳の近い王子たちと仲良くしていても何らおかしくはない。


 おかしくは、ないんだけど...



「屋敷に帰るわ。エルケ、馬車を回すよう御者に伝えて。」


「かしこまりました。では、お嬢様も公爵様がご用意されたお部屋のほうでお待ちくださいませ。」


「ううん。ここで待つわ。少し風にあたりたいの。

 どうせ周りに私に気付かないようにテオ兄様がつけた護衛がいるだろうからしばらくなら大丈夫よ。

 準備ができたら呼びにきて。」


 部屋へと案内しようとするエルケに首を左右に振って断ると、すぐ戻ります、とうなずいて彼女は足早に城の中へと入っていった。





「......っ。」


 エルケが去ったあと、この場から少しでも離れたくてレオンハルト様達がいるバラ園とは違う方向に足を向ける。


 心を落ち着かせようと、中庭をゆっくり歩いていたつもりだったが、しだいに足早になり、エルケが戻ってくるのだからあまり遠くに行ってはいけないと気がついた時点で体から力が抜けた。



「何やってるのよ。私......。」



 しゃがみこんで顔を伏せた私の姿に、今はどうか誰も気付かないでほしいと心の中で願った。


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