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王子と私の婚約破棄戦争  作者: 翡翠 律
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第43話


 ガタゴトと揺れるガーラント公爵家の馬車の中で私は膝の上に小さな小包を抱え座っていた。

 馬車はゆっくりと王宮までの道のりを走っている。


「エルケ。何か言いたそうだけど、一体なぁに?」


 公爵家を出発してからチラチラと様子を伺うどころか、あからさまにこちらを凝視してくる侍女は私が問いかけるとやっと口を開いた。


「いえ、お嬢様がまともなので体調を心配しておりました。」


 あのー、気遣うようでさらっと失礼なこと言ってません?


「いつもなら王城へ向かう馬車の中から漏れ響くアリシアお嬢様の不敵な笑い声に街人達が恐れ慄く様が見れますのに。今日はやたら街が穏やかで、なんだかわたくし落ち着きませんですわ。」


 ......不敵に笑っていたつもりはなかったけど、毎回考えた作戦の素晴らしさを思うと気分が高揚して笑いが込み上げてきていたのは否めない。


「それにしても、エルケの左右にあるその大きな袋は何なの?なんだか薬品のような匂いがするんだけど。」


「これですか?」


 2つある大きな袋の片方の紐をほどきエルケが中身を私に見せる。


「中身はですね。高級ポーションに、万能薬、ハーツホーンソルト(気付け薬)に仮死状態を回復すると言われるフェニックスの羽......」


「ちょっ、待って待って!?高級ポーションや万能薬、気付け薬までならわかるけど、フェニックスの羽なんて国宝指定されてるレアアイテムじゃない!?なんでそんなものが馬車に積まれてるのよっ?」


 しかも袋の大きさからして1枚や2枚じゃないような気がするんですけど?


「テオドール様からお嬢様が朝から体調が悪いようなので持っていくようにと指示があったのです。

 王城に着いたあとは宮廷医師に話を通してあるから何かあったら頼るようにと仰っておられました。」


 なるほど。お兄様が私を心配して用意してくださったのね。でも国宝まで持ち出すのはいかがなものか。公爵家の力ってすごいわね。いや、それを自由に扱えるテオ兄様がすごいのか。



「最初は王城までお嬢様の馬車が通る道全てに王都中から集めた医師を配置させると仰られたのですけどね。さすがにそれは都民が困るのではとわたくしがお止め致しました。」


 わたくし偉いでございましょう?と胸を張る専属侍女の前で私は頭を抱えた。




「エルケに常識が一握りでもあったことに感謝するわ。」




 兄の愛は今日も重い。

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