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王子と私の婚約破棄戦争  作者: 翡翠 律
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第31話


「............。」


 驚いたような表情で固まっているリオが、何か言いたげに唇を動かした。


「.........か?」


「え?」


「アリィは、オ...いや、こっ、恋人とかそういう相手がもし......」

「あああー!!!いた!いた!リオ!!すっげ探したぜ!!」


 リオが私に向かって何か言いかけたその時、バッシン!とリオの背中を誰かが思い切り叩いた。


「......ごめ......アリィ。」


「いえ、私は大丈夫だけど。リオのおでこが割れてないかが心配だわ。」


 背中を急に叩かれて私に倒れかけたリオだったのだが、そこは平民でも紳士なリオ、私を自分の体で押し潰さないように咄嗟に空間をあけてくれたらしい。彼の額を犠牲にして。

 手に本を持っていたからか、咄嗟に棚に手をつけられなかった彼は棚に額をついたのだ。これが所謂、壁ドンというやつか......(違う)。


「ひゃーー!?可愛い子じゃん?その子が前にリオが話していた子かよ?」


 額をさすりながら身を起こしたリオと私の隙間にひょいっと顔を出したのは金髪に近い山吹色の髪の青年だった。


 だっ誰!?


「君が『書店の女神』かぁ...。うわぁ、その上目遣い最高♡ リオなんて堅物やめてオレにしない?」


 ニヤニヤと笑いながら身をかがめて私の顔を覗き込んでくるその青年は鳶色の瞳をキラキラさせて私の顎のあたりに手を近づけてきた。



ゴンッ!!!


「っ痛えっ!」


「いい加減にしろよっ!ソラル!!」


 リオにソラルと呼ばれた山吹色の髪の青年は、私に手を伸ばす寸前で、後頭部を抱えしゃがみ込んだ。

 顔を上げるとリオがすごい形相で分厚い建築用語集を右手に持ちソラルの背後に佇んでいる。

 え、その本で後頭部殴ったの!?

 なんかリオの目、レーザー出そうなほど光ってない!?

 リオの後ろに黒い霧見えるのは私の目の錯覚!?

 いや、そもそも『書店の女神』って何!?


「ごめん、アリィ。コイツは俺のクラスメイトのソラル。今日はコイツらと一緒に資料を探しに来ていたんだよ。」


「コイツら?ってことは他にも誰か......」


「...おれの事?」


「ひっ!?」


 急にすぐ近くからまた知らない人の声がして、思わず肩をビクリと震わせてしまった。

 横を見ると私と同じぐらいの背丈の少年が、いや、少年に見えるけど、この子もリオのクラスメイトということなら青年の年齢か。青年にしては背が低く少年のように華奢な黒髪の男が私のすぐ近くで、さも目の前の光景に興味がないとでも言うような退屈そうな目つきでこちらを見ていた。


「...おれならさっきからアンタ達の横にいたけど」


 いや、全く!全く気配に気づきませんでしたけど!


「フェル!ソラルを見ていてくれって頼んだだろっ!?目を離すなよっ。」


 黒髪の青年はどうやらフェルという名前らしい。

 彼はリオの言葉にさも心外だ!というように眉間に皺を寄せて肩にかかる黒髪を手ではらった。


「...おれはちゃんとソラルを見ていたよ。...リオを探しまわっているソラルの後を追って目を離さなかった。」


「だから、見ていてくれってのはそういう意味じゃなくてだな......。あぁ、もういい。

 はぁ。ほんとごめんな、アリィ。

 この黒髪のやつも俺のクラスメイトなんだ。名はフェル。」


「フェルさん、ソラルさん...ですか。

 はじめまして。アリィです。」


「...知ってる。」


「......え、あ。そうなんだ?えーと」


 身も蓋もないフェルの言い方に、どう対話したら良いかわからない私が困惑していると、フェルがいる反対側の横からいつの間にか復活したソラルにガシッと手を掴まれた。


「よろしくアリィちゃん♡

 さん付けなんてしないで気安くソラルって呼んでく......いっ、いってぇー!そうポカポカ本で殴んなよ、リオ!馬鹿になったらどうすんだ!?」


「それ以上馬鹿になるはずないから大丈夫だ!アリィから離れろ。触るんじゃない!」


「...書店では静かに」


 わーわーと言い合いをしている3人を見て、なんだか若いなぁ青春だなぁと微笑んでしまうのは前世が元OLだったせいかしら。

 でもなんだかホッとして心の中が暖かくなる。

 だって、大事な友人にこんな素敵な友人達がいるなんて。自分がリオを後押しした学院で彼が充実した学生生活を送っていたことがわかってなんだかホッとした。


「誰が馬鹿だ!オレは勉強できないんじゃなくてやらないだけだぞ!女の子との約束で手一杯で勉強に費やす時間がないだけだっ!」


「...それ、ふんぞり返って言うこと?」


「ソラルおまえ、今度の小テストで赤点取ったら教授室で個人授業するってチェラード先生(・・・・・・・)が言ってたぞ」


 リオの言葉にソラルが青ざめて固まった。

 ん?チェラード先生?ってあの?


「ひっ!な、な...嘘だろ!?マジでっ!?やめてくれよっ。あの先生の部屋なんて言ったら......!オ、オレは男の自分をまだ捨てたくねぇーーー!!」


「...チェラード先生は範囲が広いから」


 何の範囲?とは誰も突っ込まなかったのは言うまでもない。


「そっか、なんだかソラルさ...ソラルの気安さが誰かに似てるなと思ったらチェラード男爵ご子息のチャラさ...じゃなかったフレンドリーさに似ていたのね。」


 納得!と笑顔を作った私だが、なぜかみんなが驚いた顔でこっちを見ている。


「アリィちゃん...、チェラード先生のことをなんで知ってるんだ?」


「え。なぜって......」


 目を瞬かせるソラル、唖然とするリオ、無表情で黙りこんだフェルを見て、そこでやっと私は自分のしでかしてしまった失敗に気づいた。



 ......男爵子息の名前だけならともかく、貴族であるその人物の性格なんて、ただの町娘が知ってるわけないじゃないのーーっ!!


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