クリスマスプレゼントを君に。⑥
お待たせしました。番外編は、あと2話ほどで終わるはずです。(終わるはず......)
あと、作者の活動報告のページですが、昨年度のものを整理しようと思っています。今月中に特に重要でない文は削除する予定です。
水飛沫の中の青い瞳の持ち主は、微動だにせずこちらを見ていた。切長のその冷たい色をした瞳にはなんの感情も見て取れない。
「うるさい。」と言ったその言葉からして庭園で騒いだ私と少年たちに怒っているのかもしれない。しかしその人の表情はその怒りすら読み取ることができないほどの無表情だった。
歳のころは私より少し上だろうか。上質そうな白い衣服を身につけている。身なりからして上位階級の貴族の子息であろう。
それにすごく綺麗だ。
公爵家所縁の人間かもしれない。
王族の血をひく公爵家の人間は周囲から逸脱した綺麗な顔立ちをした者が多いのだ。先程パーティーで見た彼らも髪色は輝くような金や銀、そして瞳の色は宝石のように美しい色彩ばかりであった。目の前の人物も腰ほどまである艶やかな長い銀の髪をしている。きっと高位貴族の子供に違いない。
それにしても、水飛沫に煌めく長い銀髪に白い肌、切れ長の青い瞳のその人は、まるで御伽話にでてくるエルフのようだ。
「あ、あなたはっ!!うわ、うわ、つっ、冷たい...!」
急に近くで大きな声がしてそちらを見やると先程私の人形達を噴水に放り投げた少年2人が頭に降りかかる水から逃げ回るように走っている。そして、「うるさい。」と言い放った銀の髪の子を見てなぜか驚愕しているようだった。
銀髪の少年のあまりの浮世離れした美しさに目を奪われて忘れていたが、そういえばこいつらもまだいたのであったな。
「む?」
それにしてもさっきの少年達めがけて水が降りかかっていないか?
彼らは必死に逃げ回っているのに、まるで追いかけるように噴水からでる水が彼らの頭上に降り注いでいて水から逃れることができないようだ。
「ふん。お前たち、噴水がいきなり壊れるとは運が悪かったな。」
「「え。」」
明らかに不自然な水の動きを『噴水が壊れた』と言い張る銀髪の少年にその場にいる者全てが唖然とする。
噴水が壊れた?
まさか。これは明らかに魔法......
「噴水が壊れるとは運が悪かったな、と言っている。」
「「ひっ!は、はいっ!」」
「これ以上この場にいれば、さらに噴水が壊れる可能性があるな。」
「ひいっ!?あ、お、俺たち、失礼しますっ!!」
「し、失礼しますうっ!!」
水浸しになった少年たちは銀髪の少年の言葉に真っ青になりながらバタバタとパーティー会場の方向へと走って行った。
その場に残されたのは私と銀髪の少年だけだ。
「あ!!」
目の前の出来事に呆気にとられていた私だが、自分の大事な人形達のことを思い出して、慌てて噴水の受け皿部分となっている馬が5頭ほど入れそうな水の溜まり場をのぞいた。
「水が......ない?」
さっきまで、なみなみとしていた水の溜まりは、まるで干あがったかのように水が消失している。
驚きながらも縁を跨ぎ、受け皿の中に入ると噴水の吹き出し口の近くに人形たちが落ちていた。
「濡れてない...。良かった。」
ホッと安堵するが私の背中に冷たい視線を感じて振り向くと銀髪の少年が射るような瞳でこちらを見ていた。
「ひっ。」
「何故隠す?」
反射的に人形たちを後ろに隠してしまった私に、少年がさらに冷たい瞳で見つめてきた。
「ば、馬鹿にされるから。さっきも。人形を大事にするなんて何歳だと言われたのだ。」
「貴様が大事にしているものは、隠すほど恥ずかしいものなのか?」
瞬きすらしない冷たい瞳がしらけたように細まる。
「違う!!恥ずかしくなんかっ......!!」
そう言いかけて、私ははっとした。
もしかして、この人形たちが私が大事にしているものだと気づいて濡れないように助けてくれたのか?魔法で噴水の軌道を変えて、水の溜まり場の水を消失させた?
「......人形たちを助けてくれたのか?」
瞬きをしながら銀髪の少年をまじまじと見ると彼はもうこの場には興味はないとでもいうように体を翻して去ろうとしていた。
「ふん。貴様が貴様の両親のやっていることを少しでも話したならば、アイツらと同じ目に合わせていた。」
去りながら放たれた言葉に私は一瞬固まった。
は?アイツらってさっきの意地悪なやつらのことか?同じ目ってまさか私にも水をかけるつもりだった...!?
それに我が両親、ロナポワレ家の裏の仕事を知っているというのか?
だとしたら、だとしたら、この少年は......。
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