クリスマスプレゼントを君に。②
お久しぶりです。クリスマスを過ぎ年も明けてしまいましたが、番外編の続きです。
スマホ新しくなりました。ご心配をおかけしましたσ(^_^;)。
◇
キィィンッ
弾き飛ばされた銀色の剣が宙を舞う。
審判が勝者に歩み寄り、「そこまで」と片手をあげた。
その瞬間、周囲で見学していた若い騎士たちから「うおおぉぉっ!!」と地鳴りのような興奮した声が あがり、
「きゃああああああ♡!!!」
あがり...
「素敵いぃぃぃぃ!!!」
あが...
「すごおおぉぉぉい!!!」
あが、あが ............。
王宮にある騎士団の訓練場のフェンス向こうからさっきの見学騎士達よりもさらに大きな歓声があがる。
フェンスの向こう側には一般の人々が騎士団の訓練場を見学できるスペースがあり、今日はその場所の開放日らしい。キラキラに着飾った貴婦人や町娘達、つまり騎士団の援護射撃集団が自分達の応援する騎士団の色を身に纏って見学に来ていた。
いや、婦女子だけではないな。数は少ないが騎士コスをした少年青年達も混じっているようだ。
「「「きやああああー♡!!!」」」
私が一般見学者の多さに圧倒されていると、人気のある騎士が試合に登場したのだろうか。ことさらに大きな黄色い声が上がった。雪の降る寒空の下なのに周囲の人間達の熱気がすごい。
「ああああっ!何故こんな日に私は王宮に来てしまったのだ!」
いま私は人に会わないよう見つからないように貴族用の見学スペースにある植え込みにしゃがんで隠れていた。くらくらする頭を抱え下を向きながら、観客の歓声から鼓膜を守るため肘でひたすら耳を押さえる。
今日が騎士団の年末最後の公開模範試合と知っていれば来なかったのに...。
いや、たとえ知っていたとしても限定販売のニャン人形をみすみす逃すことはできない。やはり行かねばならなかったか。いや、しかし...!
「はっ!!そうであった!!こんなことをしている場合ではないのでありますぞ!!ニャン人形の発売場所は......っ!?」
人の多さに怖気付いていたが、目的を再認識した私の視覚はものの数秒で推しの姿を見つけ出した。
どうやら今回の限定ニャン人形は、この模範試合の日のために考案され発売されたコラボ商品らしく、貴族だけではなく町の人々も購入できるように、一般客用の見学スペースの後方に仮設の販売ブースができているようだ。
貴族用見学スペースからは少し距離があり、しかもその場所に行くためにはあの群衆の中をかき分けて辿り着かねばならない。
...ごくり。
立ち上がった私の足は、まるで産まれたばかりの子鹿のようにふるふると震え、鼻にかけたメガネが自分の熱い呼吸で曇っていく。
その時、白く曇り出した眼鏡の端にフードを目深に被った集団が見えた。その集団は熱い歓声をあげる観客達を避け、たまに熱気にビビりながらもこそことと足早にニャン人形販売ブースへと近づいて行っている。
しまった!!同志か!?
ざっと見てその数50数名......!
このままでは、先着50名の中に入れないっ。
ああああ!何をウジウジとしているのだ、私は!
「ベアトリクス!怖気付いてる場合ではないでありますぞ!掴み取るのだ!自分へのクリスマスプレゼントをっ!!」
私は雪の降る貴族用見学スペースから駆け出すと、一般客用との仕切り柵をよじ登り群衆の中へと勢いをつけて飛び込んだのだった。
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