第26話
◇
一瞬にして目の前に染まったオレンジ色が人の髪だとわかったのは、その人が迫り来る氷の槍を魔法防御壁で払い飛ばした後だった。
「魔法反射」
見えない魔法の壁に跳ね返された氷の槍達はガシャンガシャンと音を立てて地に落ちる。
「た、助かった...?」
ヘナヘナとその場に膝をつくと、オレンジの髪のその人はチラリと私を横目で見て、ふっと笑った。
バタバタと音がして振り向くと私の後方から沢山の騎士達が走ってくる。
「ひっ捕らえよ!」
「「かしこまりました!副団長!」」
「いや、待て!」
すぐに魔法石を使った荒くれ者2人を捕らえようとする騎士達を副団長と呼ばれたオレンジ髪の人が片手で制する。
騎士達は第5騎士団の者達のようで、皆一様に動きやすそうな青い制服を見に纏っていた。
「そいつらではない。シャルロッテのほうだ。」
「ええっ!?イヤですよっ、副団長!!僕には先日産まれたばかりの可愛い子供が...!まだまだ死ねないんです!!」
「アタシだって、明日の非番の日に新しいパンケーキ屋の新メニュー食べに行くんです!こんなところで息絶えるわけにはっ!!」
「おまえ達...。」
青ざめて首を横に振る騎士達にオレンジ色の髪の副団長が呆れたようなジト目になった。
「しのごの言うな!!シャルロッテを捕獲後、フラナン伯爵家に連れて行き剣をおさめさせ正気に戻せ!!
拒否する者は...どうなるかわかっているな?」
副団長さんはオレンジ色の髪から覗く琥珀色の双眸を鋭く光らせる。
「「は、はいぃぃぃっ!!」」
「ちょっ!ちょっと待ってくれえぇぇっ!!」
悲鳴のような騎士達の同意にさらに悲壮な悲鳴が重なった。
見るとさっきの荒くれ者2人が身体中に切り傷をつけて騎士達にすがるように泣きついている。
「おまえら、いや、貴方様がたは第5騎士団の方なんすよねっ?早くっ!早く俺たちを捕まえてくれえぇぇー!!」
無精髭の男は泣き叫びながら騎士達の持つ捕縛用の縄を奪い取り自ら縛ろうとする。
しかし、焦ってなかなか縛ることのできない荒くれ者の後ろで爆風が上がった。
血走った目のシャル様が爆風の中で騎士剣を振り上げ男達に向かって走ってくるのが見える。
『逃ぃげぇるぅなあああぁぁぁ!!』
「ぎゃああああ!!来たっ!来ちまう!早く早く俺たちを安全な反省室ってとこに連れて行ってくれーーっ!!」
悲壮な男達の悲鳴が服飾街に響き渡った。
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