第24話
「そうか。」
シャル様が柄に手を掛ける。
「自身の罪を償うことに否と申すなら、それなりの罰を......覚悟しろっ!!」
「「うわぁぁぁっ!?」」
騎士剣を抜いた瞬間、ドンっと爆風が上がり男達は吹っ飛ぶと石畳に体を打ちつけて落ちた。
シャル様が身につけていた濃い栗色のウィッグも吹き飛び、彼女の美しい白金の髪が現れまだおさまらない爆風になびく。
下を向いていたシャル様の口元がニヤリと笑った。
鞘から抜かれた右手の騎士剣が太陽の光を浴びてキラリと光る。
『くくく......あはははは!!』
不敵に笑い出した彼女に2人の男達はすっかり青ざめて落ちた地面にへたりと座ったまま小刻みに震えているようだ。
「は...白金の髪に爆風を呼ぶ騎士剣......、まさかお前...『第五騎士団の悪夢』と言われている...」
「きょ、兄弟よぉ。ま、まさか!あいつ...『帯剣すれば騎士然となり、抜刀すれば狂気と化す』と言われている...」
荒くれ者の2人は震えながらもお互いに顔を見合わせ同時に言葉を発した。
「「狂剣士シャルロッテ・フラナン!!?」」
息ぴったりであるな。双子かおぬしらは。と私の横でビーア様が小さな声でツッコミをいれている。
「ビ、ビーア様!感心している場合じゃないですよ!あああああ!シャル様が!シャル様が!剣を抜いてしまった!!ど、どうしようっ!!」
シャル様...シャルロッテ・フラナン伯爵令嬢は王都屈指の優秀な剣の使い手である。
そして騎士を目指す者達で優秀な者は王室から飛び級制度のような特別待遇を受けることができる。
つまり普通、騎士団に入団すると第5騎士団で修行を積み、第4騎士団、第3騎士団と昇格していくのだが、優秀な者はこの特別な待遇により、第5騎士団をとばして能力によって上の騎士団へと配属されるのだ。
シャル様は本人が優秀であることに加えて、代々沢山の優秀な騎士を輩出している名門フラナン家のご息女である。本来なら第5騎士団に所属しなくても良いはずなのに、彼女が駆け出し騎士達とともに第5騎士団に所属している理由はただ一つ。
抜刀すると、......狂剣士と化してしまうのだ。
『さあ!さあ!さあ!どいつから切り刻んでやろうかっ!?貴様か!?それともそっちの髭野郎か!?』
剣を抜いたことで狂気と化しているシャル様はニヤニヤと楽しそうな表情で叫ぶと、一瞬にして間合いを詰め彼らの前に立つと銀色に光る騎士剣をぶんっと軽く振った。
パラパラと落ちたのは男達の長かった髪の毛だ。
「ひいっ!」
『次はどこを切ろうか?耳か?その薄汚い手か?』
「やっ、やめてくれ!!」
『ああ。ああ。その下品な体を切り刻んだらやめてやるよっ!!あーはっはっは!!』
シャル様の目が完全にイッてしまっている。
こうなるともうここにいる者達では誰にも止められない。彼女を止められるのは彼女の家族か騎士団の団長クラスの者だけだ。
『我が剣の元で塵と消えろおぉぉっ!!』
シャル様が剣を振りかぶったその時、
「お、俺はまだ死にたくねぇーーーー!!!」
無精髭の生えた方の男が胸元から何やら石を取り出した。
「魔法石です!皆さん伏せてください!!」
ユリアンさんが店内中に響く声で叫ぶ。
男の持つ魔法石から青白い光が放出し、石から無数の氷の槍が出現する。
そのうちのいくつかがすごい速さで飛び私達のいるカフェの外壁に突き刺ささった。衝撃に慄く女の子達の悲鳴が飛び交う。
そしてその悲鳴が響き渡る中、私はただただ目を見開き立ち尽くしていたのであった。
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◇シャルロッテは狂戦士ではなく狂剣士です。