第119話 ≪エルケ
「確かに不思議だな。
ほら。うちの子達結構なイケメン揃いだぞ?
何が不満......ああ!性格か?むむっ。性格は母として前面に推せないな。あはははっ。シャナ、どうしようか?」
面白そうに笑うヘスティア王妃をシャナス正妃はちらりと見てすぐに視線を前に戻した。
「...アリシア、顔をあげなさい。」
シャナス王妃がずっと礼を尽くしていたアリシア嬢に声をかける。
「ああ、これは気づかなかった。他の者達も。」
ヘスティア王妃が言う他の者達とはわたしやガーラント公爵付きの侍従のことだろう。そっと横を見ると顔は上げたが礼の姿勢は崩さない他の侍従達を見て同じようにすることにした。
上目遣いに見ていた視界よりも、格段に視界が広がり、2人の王妃達の横に座っている他の王妃や王子王女達までも目に映すことができた。
(うっ、煌びやか過ぎる!)
なんだろう。国王も王妃も見目麗しく威厳のある方で、息を呑むほどだが、さらに人数が増えて、わたしの視界が限界を超えた。
帰ったらアイマスクして目を休めよう。
国王の左側に座るシャナス王妃の隣には王妃よりは短いが男性にしてはかなり長い髪をした12、3歳ぐらいに見える少年が座っている。さらさらの綺麗な銀髪が縁取る美しい顔は、隣に座るシャナス様よりも国王に似ているが、その無表情さは明らかに第一王妃シャナス様譲りのように思われる。
席の位置からしても彼が第一王子、アルフォンス殿下なのだろう。
シャナス王妃より冷たい視線は何も映していないようで、今目の前で起こっている全てのことに興味がないような、そんな雰囲気だ。
そのさらに左隣、そこには赤い髪の少年が片手で頭を抱えながら座っていた。
「アルフォンス兄上、自分の前の空間に歴史書を隠してこっそり読むのはやめてください。」と小さな声で隣のアルフォンス殿下を小突く。しかし小突かれた第一王子は何事もなかったように前を向いているから、おそらく本を読み続けているのだろう。
はあ、とため息をついている赤い髪の少年は、間違いなく、ヘスティア王妃の息子、第二王子エアハルト殿下だ。
そしてさらにその左隣。
??
その隣には、わたしと同い年ぐらいの年齢の銀髪の少年が座っていた。
座っていたのだが......
ヒュン!ヒュン!
「お、お収めください!レオンハルト様っ!」
「どうか、今は謁見中ですぞっ。」
彼の周囲に魔道士らしき者達があわあわと走り回っていた。
なぜなら
「レオンハルト。嬉しいのはわかるが、氷魔法を感情のまま具現化するでない。」
シャナス王妃が無表情なりに眉を数ミリ寄せて、彼をチラリと見た。
ヒュン、ヒュン、ヒュン!
諌められても、彼の周囲の氷の塊達はますます勢いをつけて飛び交うばかりで、魔道士達もその氷を掴まえようとあたふたしている。
呆気に囚われたわたしだったが、彼の顔を見てさらに目を見開いた。
白い肌に紅潮した頬、きらきらと何かを見つめて輝く海の青の瞳。耳上にそろえた銀髪は癖がなく頭頂に天使の輪と呼ばれる光の輪ができている。
まるで愛されるために生まれてきたような華のある容姿。
彼の横には異母兄弟である第4王子やヘスティア様側の席にも双子の王女達が座っていて、彼らもそれなりのカリスマ性を感じる容姿であったが、この第3王子とは比べ物にならない。
この世の祝福を全てうけとったかのようなそんな愛らしい容姿の少年だった。
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