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王子と私の婚約破棄戦争  作者: 翡翠 律
184/191

しあわせパンプキン⭐︎ 中編②

前中後編のつもりが長くなったので中編を2つに分けました。

 ◇◇



 皆さん、はじめまして。

 俺...いや、私...あーもう慣れないから俺、でいかせていただきます。

 俺は、この国の第一王子の護衛騎士、あ、えーっと、護衛騎士って言っても近衛騎士ではなく、第一王子が街中を出歩く時にきらきらピカピカな近衛騎士を引き連れて行くと目立つからアイツらは外ではいらんということで、王子自らが設団した私設騎士団に所属している平民出身の護衛騎士です。

 第一王子アルフォンス様は、一見、いやニ見三見しても氷のような無表情なので、冷たい印象を持たれがちだけど、実は平民にも学舎を、そして国で活躍する機会をと学校や専門機関を沢山設立している平等で心優しいお人なんだ。


 そんなアルフォンス殿下を、近衛騎士はもちろん、俺たち第一王子護衛騎士団の連中もみんなが尊敬してる。

 アルフォンス殿下は王座には興味がないみたいだけど、王になれば賢王になるだろうし、王座につかなくても平民からも愛されるこの国の宝のような存在になるだろう。


 うん、尊敬だ。

 素晴らしいお人だ。


 ...いまなぜかミケ猫の着ぐるみを着て、子供や大人にまでハロウィンの菓子を配っていらっしゃるけど。


 そして、なぜか俺まで巷で流行っていると言う猫の人形ショップの黒いエプロンを付けさせられ、『ハッピーハロウィン!お菓子がほしいなら合言葉を言ってね♡』と書かれた大きなプレートを持たせられているけど。


「あのぅ?殿下?」


 俺がミケ猫の着ぐるみに声をかけると、ぐるんっと猫の着ぐるみ(中身この国の第一王子)が振り返り、シーっ!と口元で人差し指を立てる。

 殿下と呼ぶな、ということのようだ。


「あっ!す、すみません。あのぅ、なんで殿っ、いえあの、あなた様は猫の着ぐるみを着てらして、私は店員の格好をしているのでしょうか......?」


「............。」


 ミケ猫の着ぐるみは言葉を発さず、書くものを寄越せと片手でペンを持つジェスチャーをしてきた。


「あ、はい!えっとメモ帳!メモ帳!」


 俺がポケットから団員に配布されているメモ帳とミニペンをもふもふの着ぐるみの手に手渡すと、書きにくそうなもこもこの肉球をものともせず、すらすらと文字を書いていく。

 そして俺の目の前にすっと差し出した。



『市場調査だ。』



「へ?は、はぁ...。わ、わかりました。」


 いや、だからなんで王子自ら着ぐるみ着て市場調査??

 俺の心の中のツッコミには全く気付かず、ミケ猫の着ぐるみは再び菓子を配り続けるのだった。


 いや、だから、なんで??



◇◇



「ぐふぐふ。上手くいったでありますぞ。まさかメイド達が子供達にお菓子を配っている際に、追加で菓子を持ってきた仮装の使用人のふりをして外にでるとはじいやでさえ思わなかったでありましょうぞ。」


 ふんふんふーん。

 本当に大正解だった。普段は人の目が気になってびくつきながら進む大通りも今の私にはまったく気にならない。

 なぜ?って?

 それはなんとっ!私は今、白猫の着ぐるみを見にまとっているからである!


 足取り軽く、先程スイーツタイムに我がロナポワレ家のパティシエが腕によりをかけた菓子類を入れたカゴを持って進んでいると、なにやら子供たちが寄ってくるではないかっ。


「トリックオアトリート!白ねこちゃん可愛いねぇ。」


「ハッピーハロウィン!猫さん、わたしとお菓子こうかんしよう?」


 楽しい。非常に楽しいでありますぞおおぉ!!


 私はカゴの中のお菓子を寄ってくる子供達に配る。

 子供達は幸せそうな顔で、ありがとうとお礼を言い、私から猫クッキーやカボチャ色マカロンを受け取ってくれた。


 あらかた配り終わり、ふと周りを見渡すと沢山のお菓子を袋に入れた子供たちが、親や祖父母と仲良く手を繋いで帰っていく。


 「たくさんもらったよ。」

 「おうちで食べようねぇ。」


 皆ニコニコとしあわせそうな顔だ。

 つい、彼らのぎゅっと繋いだ手を見てしまう。


 (きっとあの手と手はあたたかいんだろうな。)


 そんなことを考えながら歩いていた私は、はっとした。


「えええっ?ここって...どこでありますかな!?」


 そうなのだ。お菓子に配ることに夢中になっていた私は、かんっぜんに道に迷っていたのだった。




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