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王子と私の婚約破棄戦争  作者: 翡翠 律
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第111話 ≪エルケ

◯もうすぐ総合評価が2000ポイントになりそうです。いつも応援ありがとうございます。達成したら久しぶりに脇役達の本編に関係ないエピソードを書こうかなと思っていますが、誰が主役の話が良いでしょうかね。


◯『リーシャ・マクスランダは天才である。』『白魔法使いと7人の弟子たち』も投稿しています。

 今後の予定としては、『間違えて王子様にキスしてしまったので取り消させていただきます。』の次話を投稿予定です。こちらも応援よろしくお願いします。



◇◇


「はじめまして。エルケさん。わたくし達はアリシア様が王都にご滞在なさる間、アリシア様の身の回りのお手伝いをさせていただいているルルとハンナです。」


 わたしより5.6歳は年上であろう侍女2人が、優雅な礼をした。洗練された身のこなしも、複雑に結われた髪型も、派手すぎず地味でもないバランスのとれたお化粧も今までいたガーラント公爵領では見たことのないような知性的で華やかな侍女達だった。さすが王都にあるタウンハウス仕えの女性達だ。


 わたしは今ガーラント公爵様の領地から王都へと来ていた。もちろんアリシア嬢のお世話役としてだ。

 なんでも王宮で開かれるパーティーがあるらしく、ガーラント公爵家はパーティーに出席するため3日前に領地の公爵邸を出発し、先程無事に王都に到着したというわけである。

 王都にあるガーラント公爵邸、つまり王都に来た時にガーラント公爵のご家族が滞在するタウンハウスは王都の南側に位置し、眩しいくらいの白い壁に都心部にしてはかなりの広い庭がある屋敷だった。



「はじめまして。よろしくお願いいたします。」



 わたしが深い礼を返すと、ふふ、可愛いとハンナが笑う。可愛い?


「では、さっそくここでの仕事や間取り、覚えなければならない訓示などをわたくしとルルから説明させていただきますわ。」


「訓示?それはお仕事の規則ですか?」


 やはり領地と違って規則が厳しいのだろうか?


「まぁ、それは後々。まずは...そうですわね。エルケと呼んでよろしいかしら?エルケは空間魔法は使えますか?」


「初歩的な空間魔法ぐらいならば使えます。」


「そうですか。素晴らしいです。それではこれを。ルル。」


「ハイ。」


 ハンナに促されたルルから分厚いノートのようなものを手にのせられる。


「うわああああっ!!何ですかっ!?これは!?」


 見た目よりさらにずしりと重い焦茶の革表紙のそれを思わず落としそうになって慌てて抱き抱える。


「見た目よりなんだか重い??」


「ふふ。重いでしょ?そのノートはメモ帳ですわ。見た目よりかなり重量があるのは増幅魔法によって中身のページ数が5倍となっているのです。

 そのメモ帳はガーラント家タウンハウスの使用人が皆携えているメモ帳なので大切に扱ってくださいね。」


「メモ帳......。」


「ええ。わたくし達のように王都でのお仕えをさせていただく者にとって1番大事なものは......つまり、ずばっとすぱっと言って、『情報』でございますわ!!」


「情報......。」


「そう情報です!ルル!!」


 呼ばれたルルさんがお仕着せをひるがえし何故かバク転をした後に片手を前に突き出すと、しゅばばばばっと何かの紙が舞う。

 よく見ると沢山の商人の名前が書いてある紙だ。おそらく名刺というものだろう。

 そしてさらに何故かハンナさんがその前を側転でくるくると回転するとしゅたっと膝立ちで両手をあげた。

 すると、リボンのように長く連なった紙が四方八方から降ってきた。落ちた部分を拾って見てみると、それには貴族達の名前や特徴趣味などがつらつらと書かれている。


「ガーラント家使用人訓示第1条っ!!」


 しゅばっとポーズを変えるハンナさんとルルさん。

 立ち上がり指を1と示している。


「『メモれ!とにかくメモれ!!メモは武器よりも強し!』でございますわ!!」


「それはペンなのでは?」


「エルケ、ごらんなさい。」


 ルルさんがどこからかすっと持ってきた庭用の巨大な煉瓦ブロックがハンナさんの前に10個ほど積まれていく。ハンナさんは自身のメモ帳を空間から取り出しつかんだそれを煉瓦ブロック目掛けて思い切り振り下ろした。


「はいやああああっ!」


 ドゴオオオオォォッ!!


 粉々に砕け散る煉瓦ブロック。


「見ましたか?ね、メモ帳は武器よりもペンよりも強いのですよ。」


「....メモ帳というより、ハンナさんが強いのはよくわかりました。」


「まぁ、とにかく、ここで働くにはメモ帳は必要です。大事にしてくださいね。」


 ハンナさんの言葉にわたしはすぐさま訂正した。


「ハンナさん、わたしはアリシア嬢の乳母である母に領地にいるアリシア嬢のお世話を頼まれました。ですから、アリシア嬢が領地に帰る時にわたしも帰ることになります。王都のこの屋敷で働くことはありませんよ。」


 わたしがそう話すと、ハンナさんとルルさんはお互いに顔を合わした。


「もしかして何も聞いていないのですか?」


「え?何を?」


「...いえ、いいですわ。

 とにかく、王都でひとときでもアリシア様にお仕えするならば、そして王宮のパーティーに同行させていただくのならば、やはり『情報』は必要です。

 まずは、この商人たちの名刺と先輩使用人たちが作成した貴族名簿!これらを先程お渡しした自分専用のメモ帳に書き写すところから始めましょう。」


「この量を?」


 リリーン!リリーン!


 ふかふかの絨毯に山積みの名刺と蛇のとぐろのように長い貴族の名前が書かれた紙を遠い目で見てると、鈴の音のような音が使用人部屋と通路に響き渡った。


「なっ、何ですか?この音は?」


「ああ、到着されてからしばらく大人しくなされていたけどやっぱりですか。」


「え?」


「エルケさん、メモ書き作業は後にいたしましょう。

 たった今、


 お嬢様が脱走されました。」



◇ブックマーク、評価で応援いただけたら嬉しいです。

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