第103話 ≪エルケ
すーっごくお待たせしました!
最近めちゃくちゃ忙しく執筆時間がとれませんでした。気分的には明るいビーアちゃんの話でも書きたいところですが、続きを待っている方がいらっしゃるかもなので続きです(^^)。
◇◇◇◇
「エルケ?」
「そうですよ。アリシアお嬢様。私の娘のエルケです。
お嬢様がお産まれになって間もないころ、そうですね...1歳ぐらいまでともにお過ごしになったのですが、あまりにも幼い頃ですから覚えてはいらっしゃらないかと思いますわ。」
母様はそういうと、目の前で不思議そうにわたしをジロジロと見ている金髪の幼女に挨拶するようわたしを促した。
「.........エルケです。」
心の中では何でわたしがこんな子に挨拶なんてしなくてはならないわけ?と思ったけど、わたしだって貴族のルールぐらいはわかる。
わたしの母様にアリシアと呼ばれた目の前の金髪の幼女は、公爵家の娘、対してわたしは公爵家に目をかけてもらえてなんとか細々とやっていけている男爵家の娘。
公爵家なんて貴族の中でも王族の血が流れている別格の存在だ。そんな存在に挨拶もしなかったらどうなるのかなんて分かりきったこと。
仕方なくわたしはよそ行きのワンピースの裾を持ってアリシア嬢に挨拶をする。
「よろしくね。私はアリシア。アリィって呼んでね。」
水色と白のリボンやレースであしらわれた可愛らしいドレスの裾を持ち上げて挨拶しようとしたアリシア嬢を母様が慌てて止める。
「お嬢様。それはなりません。愛称で呼んでいいのは対等な立場、ああ、お言葉がちょっと難しいですね。
つまり愛称で呼んでいいのは、アリシア様のご家族やご友人だけですわ。大切な方だけです。
それにこれからアリシアお嬢様にお仕えするエルケには挨拶を返す必要もありません。」
「え、でも......。」
目を丸くして母様を見上げ、キョトンとしたその表情さえなんだか腹立たしくて、わたしは「失礼します。」と再度カーテシーをして足早にその場を立ち去った。「エルケ待ちなさいっ!」というような母様の声が聞こえてきたけどしるものか。
早歩きからだんだん駆け足になる。
ちらりと後ろを振り返ると、何が起こったのかと目を瞬かせてこちらを見ているエメラルド色の瞳と一瞬視線がぶつかった。
振り向くんじゃなかったと後悔し、今度はまっすぐに前を向いて、公爵家の庭の奥へと走る。
綺麗な瞳。まるで宝石のよう。
私の目はどこにでもいそうなブラウンの目、そしてダークブラウンの髪。あの子みたいにふわふわな綺麗な金の髪なんかじゃなくて。
肌も日に焼けたことのないような透き通った白さで。
あの子の存在自体がキラキラな宝石みたいだ。
走っていた足を止めて見渡せば、公爵家の広大な庭。
そっと見渡すと公爵様の豪奢な本邸に数々の別邸。
こんな圧倒的権力を反映した屋敷や庭や広大な領地持つ公爵家の大事な宝物。それがあの子だ。
誰もがあの子を大事にする。
キラキラだから。だってキラキラしてる。
可愛らしいドレスを見に纏ってニコニコして。
きっと寂しい思いや、苦労なんてしたことないんだろう。
ーーだから、母様はいつも、わたしよりあの子を大事にするんだわ。
◇ブックマーク、評価で応援いただけたら嬉しいです。