第94話 ≪リオ
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王立学院はアルフォンス第一王子が試験的に作った平民が通う最高峰の学習機関で、貴族学校と違い歴史は浅いが、国中から優れた人材が集まったシーガーディアン国の未来を担ういま最も期待されている学院だ。
その校舎は貴族街に近い文教区にあり、まだ若い蔦が這う白い壁に青い屋根の美しい建造物である。
俺は、通い慣れた、しかし最近は忙しくてなかなか通うことができなかったよく見知った学院の門をくぐり、4時限目の授業が行われる大教室を目指した。
教室のドアを開くと、1番後ろのしかもすぐ外に出れそうなドア側端の席に座っていた山吹色の髪の男がその鳶色の瞳をパッと輝かせてこちらに大手を振った。
「おお、久しぶりじゃん。リオ!」
「ソラル、また端に座ってるな。途中で抜ける気か?」
いつも教師が出欠を取った後にこっそりと授業を抜け出す山吹色の髪の学友、ソラルにあきれながら、彼の隣の席へと座った。
「まぁまぁ、いいじゃん。久しぶりにリオに会えたんだから今日は抜け出さねーよ。実家の手伝いが忙しかったのか?」
「まぁ、そんなとこだな。」
「そうか。大変なんだな。そういえば最近フェルのやつも学院に来てなくてさ。」
「...オレならここにいるけど?」
「ひいっ!?」
俺を挟んでソラルとは反対側の席からフェルの声が急に聞こえてソラルがその声に驚いてガタガタンと奴の座っていた椅子が音を立てた。
「フ、フェル!?おまえいつからそこにっ!?
さっきまでその席、空席だっただろーが!!」
俺が座る前からフェルはその席に座っていたのだけど、どうやらソラルは気づいていなかったようだ。
少年のように華奢で背の低いフェルがさも心外だというように口をとがらす。
「...ずっといたけど?...ちなみにオレは今月一度も学院を休んでいないから。」
「はぁ?おまえいなかったじゃねえか?」
「...君が女教師や女生徒ばっかり見ているから気づかなかったんでしょ?」
「んだと!?俺を女好きでどうしようもないような奴みたいに言うなよ!」
「女好きでどうしようもないような奴だろ?」
「...女好きでどうしようもないような奴でしょ」
あー、見事に俺とフェルの台詞がハモったな。
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