第87話
次話を書き上げているので、このあともう1話投稿予定です。
「お嬢様〜〜〜〜!!」
「ほら、さっさか歩いてください、総料理長。」
「えーっと、執事長、悪気はなかったんだから、お、大目にみてあげてね...」
食器棚の棚卸し作業に総料理長が執事長に連行されて行く姿に「頑張るんだよ」と手を振った後、私とエルケは私の自室へと戻った。
「エルケ、午後からの予定は?」
私は窓辺のソファーに腰掛けながら、部屋に届けられた書類や封書を確かめているエルケに声をかけた。
「今から1時半までは休憩をとってくださいませ。そのあとは、王太子妃教育の外国語と国史、ダンスの練習となっています。明日は王太子妃教育はお休みですので、お好きなことをなさっていただいてかまいません。ただしガーラント公爵邸の中でですが。」
「やっぱり外に出ては行けないのね。」
はぁ、とため息をつく。
「公爵様からの命令ですので、申し訳ございませんがこのエルケにはどうすることもできません。」
「嘘よ。いつもならエルケはお父様からの命令でも、ううん、王族の命令でも私のためなら反故にするわ。
つまり、お父様からの命令が私のためになると判断した上での行動でしょう?」
「わたくしの忠誠心の固さが角砂糖より硬いのが、よくおわかりになっていらっしゃるようですね。」
「そのいつもの例え、まったく固くなさそうなのだけど。」
あははと力無く笑い、私のためならばエルケは絶対に部屋から出してくれないのがわかるので今日は大人しく王太子妃教育を受けることにしよう。
コンコンと扉がノックされ、エルケが対応する。
どうやら扉の外にいるのはお父様付きの侍従のようだ。エルケとしばらく話したあと礼をして立ち去った。
「何かあったの?」
「もうすぐハインリヒ様がこのガーラント公爵邸へ来られるそうです。」
「ハインツ従兄様が?」
「はい。先程の侍従の話によると、テオドール様が王宮から帰って来られるまでの間、ハインリヒ様はガーラント侯爵邸に滞在されるとのことです。
ハインリヒ様が来られたならば、庭に出ることを許可すると公爵様は仰っているとのことです。」
なぜハインツ従兄様がここに来たら許可が降りるのだろう。
「ハインツ従兄様は騎士だから安全上の問題?私の護衛?でも公爵邸の庭よ?安全なはずだわ。」
「詳しくはわかりません。お嬢様が倒れられた日から公爵様もお忙しく、わたくしめもまだ詳しくは話を聞かせていただいてはいないのです。」
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