海底神殿と赤い髪の勇者 14
「す、すまない。
って、俺は神殿にもどってるのか?」
ゼリンダから距離をとり、周囲を見渡すと儀式のために訪れた海底神殿の中だった。
「また穴あけられたら困るからアタシが誘導してあげたのよぉー?感謝しなさいよねっ?
アタシがこの祭壇を守り出してからン千年、大事な結界にあんな大きな穴開けられたのは初めてだかんね!」
ありえないっつーのと額に手をあて、ゼリンダは大袈裟に天を仰ぐ。
彼女の肩は不自然に小刻みに上下していて、顔には疲労の色があった。
「もしかして...、かなり大変だったのか?」
「なっ!?大変なわけないっしょ!!アタシを誰だと思ってんの!?海の女神ゼリンダ様よっ!?」
キーーッと詰め寄るゼリンダの迫力に俺は若干背を後方にのけ反りながら「悪かった悪かった」と謝罪した。
「はぁ。この神殿......祭壇はね。アンタ達人間が思っているよりもいろんな奴らに狙われてんのよ。隙あらば侵入しようとしてる悪意...魔獣達、そして悪神や悪魔達にもね。
アンタが結界を破いた際にそいつらを跳ね除け、瞬時に修復し入りかけた奴らを同時に消滅させればさすがのアタシも焦りから疲れぐらいでるわよ。」
さらっと言ってるが、悪神や悪魔だと?
まさか、魔獣以外にそんなものまで本当に存在するのか?
......ゼリンダは女神だ。話し方から一瞬忘れそうになるが。女神の彼女が言うのだとしたら本当の話なのだろう。
つまり、俺の身勝手な行動で、この神殿が危機にさらされるところだったということか。
「反省してンの?」
「悪かった。俺の行動は謝っても済まない状態を引き起こすところだったんだな。」
「へぇー。ちゃんと反省してンじゃん?じゃあ、その罰もちゃんと受けてもらおっかなぁ。」
仕方がない。
「神殿は聖なる場所だ。神が住まう場所を俺は危機に陥らせてしまうところだった。どんな罰でも......。」
と目を伏せ、言いかけたところで、俺の額に激痛が走った。
「っ!????」
何が起こったのかわからず、目を見開くとゼリンダの右手が指を立てて眼前にある。
「天罰のでこぴーーん!!」
「は?」
真面目な表情で盛大なデコピンをかましてきた海の神に俺は本気で固まった。
ゼリンダはそのまま仁王立ちでデコピンした体勢のままふんぞり返っていたが、しだいに肩が揺れ出す。
「......ぷっ。くっ、くっ。ぷぷ。あはは!
あはっ。あはは!!あーっはははははははっ!!」
急に大笑いしだした彼女の声が静かな海底神殿に響き渡った。
「なっ。どうした?何を笑って...」
目を白黒させる俺にゼリンダが笑いすぎて目尻に滲んだ涙を指先で拭きながら言った。
「だーってさ、アンタ最高!あはは!!あはははっ!!
ずっと、ずーっと長い間ここを守ってきたけどさ!
神が作った結界を無理矢理ぶち破って水トカゲ一匹助けに行く王族なんて!
あははは!はっじめて!マジ最高じゃん!?
無茶苦茶じゃん!?ありえんの、これ?はは!
あはは!あーーっはっはっは!!」
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