海底神殿と赤い髪の勇者 12
お久しぶりの投稿です。少し文章が短いけど、何回か更新を確認に来てくれている方がいらっしゃるみたいなので短めだけど投稿しました。いつも不定期な更新でも待っていてくれてありがとうございます。
◇◇
「...それで?コイツはなんなのだ?」
アルフォンス兄上が祝杯を掲げた後、瞬きもせずにパーティ会場の俺のテーブル席横に行儀よく座っているソレを凝視している。
「何って?水トカゲだな。」
俺がそのままを答えると、赤い水トカゲは首を傾げ、『なになに??自分のこと??』とでも言いたげに兄上を見つめ返した。
「!!」
その仕草を見た兄上が明らかに動揺している。
きっと近くにいる俺ぐらいにしかわからない程度だが、1ミリほど両目を見開き、かつ1ミリほど後ろに仰け反った。
「兄上、どうした?」
「アルはこう見えて可愛いものに目がないからね。とくにピンク色のウサギちゃんへの隠れた執着とかすごいよ〜?」
いきなりわって入ってきた軽い口調に横を振り向くと、明るい灰色の瞳と間近で目が合う。
「お誕生日おめでとう。そして成人もおめでとうだね。」
目の前の灰色の瞳の男は、俺の肩に手を回すとめちゃくちゃ近い距離でにっこりと笑う。
王族にここまで馴れ馴れしく近づくこの男。彼はフリートヘルム・ア・チェラードと言い、兄上の幼き頃からの学友だ。兄上とは180度性格が違うが魔法学や国史学の話では話が合うらしく兄上に常に王宮へと呼ばれ図書館や資料室に2人で引きこもっている。
幼いころから身近にいたので、彼のことをフリッツ兄と俺は呼んでいるのだが、昔は俺のほうが背が低かったのに久しぶりに横にならぶと俺のほうが彼より背が高くなっていた。
「プレゼントは使用人に渡しておいたよ。あとで楽しみにしていて。」
「ありがとう。フリッツ兄。......ところで、さっきのピンクのウサギ?ってなんのことだ?この国にはピンクのウサギなんていないよな?」
礼を言いつつ、さっきの発言に首を傾げる俺にアルフォンス兄上の絶対零度の視線が突き刺さった。
「エアハルト、この世の塵になりたくなければコイツの発言は忘れろ。」
ぴゅうううっと冬でもないのに室内なのに雪混じりの風が吹く。
「ひっ!?え!?あ、ああ......わかった。」
「また、まーた!照れちゃって!こ、の、むっつりさん♡」
兄上に慄く俺に対し、やたら嬉しそうにアルフォンス兄上にからむフリッツ兄。や、やめろって、兄上のほっぺたツンツンはやばいって!
「チェラード、塵と消えろ。」
地の底から聞こえる地鳴りのような低い声が会場に響き渡る。
会場の窓という窓から海の水が輝きながら兄上、いや正確には俺の隣のフリッツ兄めがけて飛び込んできた。
「おわああああぁぁぁ!?」
同時に丸い球体がフリッツ兄を海水ごと包み込んだ。
透明な球体の中では荒れ狂う海水がまるで洗濯機のようにフリッツ兄をぐるぐると回転させている。
俺の生誕祭パーティーだから派手なことは遠慮したのか、兄上はフリッツ兄を中心に半径1メートルほどのバリアを貼ってバリア内で水魔法をぶっ放したようだ。
氷魔法だったら確実に塵(凍りついた後に粉砕)になってしまうから、やっぱりアルフォンス兄上は優しいなぁと俺は思う。
優しいですか?バリア閉じ込めて最上位の水魔法ぶっ放してるんですよ?と近くの近衛兵が引き攣りながら青い顔でなにやらつぶやいていたが。
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