海底神殿と赤い髪の勇者 11
公式企画「秋の歴史2022」に連載小説『永遠に散るらんーTowa ni thiruranー』を投稿して参加しています。
平安時代の少し切ないお話です。お時間あるときにでも読んでいただけたら嬉しいです。
太陽の光に照らされ影となった怪鳥の足先で時折赤いものが反射して光る。
ハルフに掴まれた赤い水トカゲが、大きなシッポを左右にふって抵抗しているようだった。
ーーー自然界の摂理。
「それでも、アイツは生きたいってあがいてる。」
ズシャッ。
気持ちの悪いを音を上げて、岩に止まったハルフの足元で水トカゲが潰される音がする。
それでも尚、水トカゲはジタバタともがいて抵抗していた。
最初に海中からつかみ出された時もアイツは必死で抵抗していたんだろう。だから海中に水泡が立ち光に反射して赤い色が見え隠れしたんだ。
仲間の元に帰るために。
体色はまったく違う自分の仲間たちのところ戻るために。
アイツは帰りたいと思ったんだ。
そこが自分の居場所だから。
......だったら俺はどうなんだ?
俺が帰りたい場所はどこだ。
自分の居たい居場所はどこなんだ。
髪が赤いから、火の魔法のほうが得意だから、気性が母の国の戦闘民族の血を濃く表しているから、だからルビナスを選ぶのか。
俺は......。
「..............っ!!」
どうしたいかなんて明確じゃないか。
改めて考えたらすぐに答えは出た。
だってそうだろう?
俺はシーガーディアン国で産まれ、シーガーディアンで大切に育てられた、父上にも、母上にも。シャナス様にもまるで自分の息子のように可愛がってもらった。アルフォンス兄上はふだん無愛想で自分本位だが、ここぞと言う時はいつもさりげなく力になってくれた。レオンハルトとはアルフォンス兄上がパーティーをサボるたびに共に力を合わせて危機を乗り切った仲間だ。レオンは俺をアルフォンス兄上と同じようにまるで血のつながった兄のように接してくれる。
そして、俺の成人を国民は国を上げて祝ってくれた。王族でありながら騎士団にも所属している俺は民と話す機会が多い。魔物退治の遠征に行く際は街道に民が集まり、俺の無事の帰還を祈ってくれる。
まだ幼いとき、庭で1人で剣の稽古をしているとお茶を用意してくれた庭師のじいさん、そして体を動かすことは好きだが勉強嫌いな俺に自ら休み返上で向き合って知識を教えてくれた家庭教師。
確かに王族に他国の血が混じるのを良しとしない者もいる。
だが、俺はこの国にいて愛されなかったことなど一度もなかったじゃないか。
だいたい、この国は俺にふさわしくないなんて、なぜ他の人間が決めるんだ。
自分じゃない誰かがなぜ決める?
自分が居たい場所は
「自分で決めるんだ!!」
儀式のためにつけていた腰の装飾剣を二本抜き、怪鳥ハルフに投げつけた。
そして俺は地面を思い切り蹴り近くの岩に駆け上がりそれを台にして飛ぶ。空中で母から譲り受けたバスタードソードを引き抜くと、ハルフ目掛けて振り下ろした。
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