海底神殿と赤い髪の勇者 ⑨
「ちょっおっとおぉー!!神サマが作った神聖な結界勝手にぶっ壊してんじゃないわよーー!!」
塞がっていく海面から海の女神ゼリンダの絶叫が聞こえた。しかしすぐ結界の修復が行われたのかその声は波に消えていった。
ぴぃーーーー
海面に飛び上がった俺の口笛に気づいた騎士団の海竜達がものすごい勢いでこちらに飛んでくる。
「いい子だ!」
俺はそのうちの1匹の海竜にひらりと乗り移ると遥か彼方へと小さくなっていくさっきの怪鳥を指差し、海竜に指示をだした。
「あの鳥を追え!他のものは騎士団へ戻れ!」
ぴぃぃぃぃぃ.......
「急ぐぞ!」
俺の声に海竜は一鳴きすると全速力で怪鳥目がけて飛び立ったのだった。
◇
「ここは......?奴の巣か?」
その後、怪鳥を追い続けた俺と海竜はゴツゴツとした大岩が立ち並ぶ小さく島に着いた。
1番高い岩の上に奴の巣なのか、茶色い木の枝か草のようなものが積み上げられた何かがあった。
バサッバサッ
羽を羽ばたかせる音が聞こえる。
バササササッ
巣らしきものから飛び上がったのは、やはりさっきの怪鳥だった。逆光でよく見えないが、どうやらこちらには気づいてないらしい。一瞬の間に奴はまたエサを探しにでも行くのか空高く舞い上がり海の彼方へと飛んでいった。
「遠目だが、尾に青と白の羽根が見えたな。
おそらくあれは、ハルフか......。」
ハルフとは、海に散らばる人気のない小島に巣を作る巨大な鳥だ。主食は大蛇や大トカゲだが、自分のテリトリーに入った人間や動物にも襲いかかる獰猛な性質を持つ。
「やっかいな鳥だが、もしあの怪鳥がハルフならまだあいつは無事かもしれないな。よし、おまえは俺が合図をするまで岩陰に隠れていろ。」
海竜の額を撫でてそう言うと、俺は奴の巣のある岩へとそっと歩みを進めた。
あまり大きな音を立てると巣を確かめる前にハルフらしき鳥が帰ってきてしまうからだ。
あの怪鳥が本当にハルフなら、おそらく連れさられた赤い水トカゲは無事だろう。ハルフは生きたエサを巣に押し込み弱らせてから食べる習性があるんだ。
そして、だからこそハルフは巣の周りをトゲのある木や蔦で囲む。捕ってきたエサが逃げ出さないように。
つまり、あの中にいると思われる赤い水トカゲは、生きていても自力ではあの巣から脱出できないはず。
助けに...そう思った時、ゼリンダの言った言葉が頭に浮かんだ。
ーーー『自然界の摂理よ』
そうだ。確かにこれは自然界では仕方のないことだ。
強いものが弱いものを捕食する。人が手を出してはならない領域なのかもしれない。
しかし、俺は......。
ギリリ、歯を強く噛み締めとき
バキバキバキバキ!
ドン!バタン!!ドンッ!!
やたら激しい音がして、頭上から何かが降ってきたのだった。
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