海底神殿と赤い髪の勇者 ②
お久しぶりです。2話目を投稿しましたが、ゆっくり書く時間がなかったのでわかりにくい部分をあとで訂正・改稿する可能性があります(^_^;)
◇◇
その日は、朝から王宮が忙しなかった。
それもそのはず、俺、つまりシーガーディアン王国の第ニ王子であるエアハルト・シーガーディアンの生誕祭だからだ。生誕祭......いや、本来は生誕神告の儀という大層な名前がついているのだが今の周囲の様子を見ていると祭りといったほうがしっくりきそうだ。
毎年誕生日には王宮で誕生パーティーが開かれるが、今年はそんなパーティーどころではない。数日前から近隣諸国からも俺への贈答品が続々と届き、王都では生誕を祝う俺の肖像画入りグッズ(なんでこんなのが需要があるのかがわからないが)が売られ、国をあげてのお祭り騒ぎだ。
なぜそんな国をあげての祝いになっているのかというと、今年の誕生日は俺が成人となる日。つまり一人前の王族と認められ、この身を王国と我らの海へ捧げると誓いを立てる日だからだ。
よって、俺は動きにくいゴテゴテの儀式用の衣装を着せられ、俺の愛剣以外に儀式用の装飾剣を腰に何本も帯剣させられていた。
最後にこれまた足首あたりまである白く長いマントを肩につけられ、侍従たちに促され衛兵達がゆっくりと開けた自室の扉を出て、まず朝の食事に向かう。
なぜ朝食後に着替えないのかと言うと、俺が朝目覚めた瞬間からすでに儀式は始まっているからだそうだ。
主役である俺はこれでもかと言うほどに装飾のついた衣装を着るのに時間がかかったから、朝食をともにする家族は正装をして皆すでにテーブルについているころだろう。
長い廊下を進むと、左手に大きな両扉が見えてくる。
それまで作業をしていた使用人たちが一旦手を止め、廊下脇に整列し俺に対し礼をする。
「続けてくれ」と配膳作業を促し、扉の前に立つと扉の両横にいる衛兵達が俺の来訪を中にいる兵に告げた。
「開けよ。」
父の声が中から聞こえ、重たそうな食堂の扉がギギっと小さな音を立てて開かれる。
俺は開かれた扉から一歩中に足を入れた。
「おはようございます。父上、そ、ぶぶっ!?」
父と家族に挨拶をしようとした俺だが、目の前の柔らかくでかい何かに思いっきりぶつかった。
「なっ......!?」
「とうとうエアハルトも成人なんて!!母は嬉しいがなにか寂しいぞ!いや、しかしめでたいっ!!でもやっぱり寂しい!!しかし、祝わねば!!」
俺がぶつかった柔らかい壁......は、俺の母親だった。
彼女は赤い髪を振り乱して、むぎゅむぎゅと抱きしめてくる。
「は、母上、ぐるじい!俺はもう子供じゃないんだからこーいうのはやめてくれ。」
それに義兄であるアルフォンスが零下の視線でこちを見ている。義弟であるレオンハルトは厚い眼鏡をかけているのでよくわからないが、顔の向きがジーッと料理を向いているから腹をすかしているのだろう。他の義妹義弟もまだまだ成長期の子供だから早く座って食事を摂らせてやらねば。
「ふ。相変わらず仲が良い。」
父上、母の愛で息子が圧死しかけているんだ。笑ってないで止めてくれ。
俺の母は太陽の国と言われるルビナス出身。ルビナス国の国民は戦闘民族で、非常時は男女ともに戦に出るため女性でもかなり力強い。そしてこのシーガーディアン国の女性が小柄で華奢な者が多いのに対して、ルビナスの女性は大柄だ。例に漏れず俺の母、シーガーディアン国側妃ヘスティア・シーガーディアンも俺とあまり変わらない身長があった。
「ヘスティア。座りなさい。」
俺の脳裏に綺麗な川が映し出され、「こっちに渡るかー?」と赤い髪と銀の髪のご先祖様達が手を振っている幻覚が見え始めたとき、その場の空気を凍り付かせるほど冷たい女性の声が聞こえた。
料理を見ていたレオンハルトがハッとその声に顔を上げる。自分の母親の声が室内に響いたからだ。
そう、その冷たい声をかけた女性は、この国の第一王子で俺の義兄であるアルフォンスと義弟であるレオンハルト、2人の兄弟の母親でありこの国の正妃であるシャナス・シーガーディアンその人だった。
「む?シャナ、せっかくの親子の微笑ましいスキンシップを邪魔するでない。」
いまだにぐりぐりと俺の額を自分の肩に押し付けている母上が不機嫌な声を出す。
「私の言うことが聞けませんか?ヘスティア?」
対して、正妃のシャナス様も義兄アルフォンスにそっくりな零下の視線で眉を寄せこちらを見てきている。
正妃vs側妃。
気のせいか、バチバチと火花が散ったような...。
ゴクリ、俺の後ろで衛兵たちが息を飲む音が聞こえた。
◇ブックマークや評価で応援いただけたら嬉しいです。