海底神殿と赤い髪の勇者 ①
◇『最愛の悪女になるために。』第3話と『某織物師は未来を織りなす』の第2話を投稿しました。
◇短編『コレじゃない物語 ー攻略対象者にうっかり攻略対象にされましたー』が、アニメイトさんの『耳で聴きたい物語』コンテスト2022の一次選考を通過しノミネートされ読者投票が始まっています。応援いただけたら嬉しいです。
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お待たせいたしました!ブックマーク500人の皆様ありがとう記念の番外編です。
レオンハルトの異母兄である第二王子エアハルトのお話です。本編より過去の話になります。
「ンで?アンタはそれでいーわけ?
一回誓っちゃったら取り消せないよ?
わかってんの?アンタ。」
目の前美女が、その容姿にとてもつもなく不似合いな言葉遣いで俺に問うてきた。
俺は普段あまり女性と話す機会がないが、それでも彼女がとてつもない美女で、尚且つとてつもない話し方なのはわかるのであまりの衝撃に目を瞬かせる。
「ちょっと早く答えてよねぇ。
アンタもこのあと式典の続きとお祝いのパーティーとかあんでしょ?いいなぁー。アタシも地上に出て美味しいもの食べたいわぁ!」
石碑の上に足を組んで座る美女は口を尖らせた。
そうだった。
あまりのことに唖然としていたが、俺はこのあと地上に戻って式典を終わらせなくてはならない。そのあとはパーティーがある。俺には兄弟姉妹が6人もいるが、今日は俺が主役となっている日だ。主役がいつまでもここから出て来なければ、地上で待つ神官が大騒ぎするだろう。
ん?家族は心配しないのかと?
そうだな、家族は......俺が言うのもなんだが、俺の家族はこう、ちょっと、いや、かなりか?個性的な者が多くてだな。おそらく心配はしないだろう。逆に何があったとワクワクするか、無関心か、興味深く推測しだすか......まぁ、悪い者達ではないから、俺の身に何かあれば最終的には助けに来てくれるのだろうけど。
しかし、俺は大抵のことは1人で切り抜ける自信はあるので、家族もこれぐらいのことでは心配はしないだろうがな。
「で!?どーすんの?」
神聖なはずの石碑の上に今度は仁王立ちした美女が早くしろとばかりに人差し指を俺に突きつけてくる。
「おい、踏んでいいのか?それは、君を祀っている石碑なのだろう?」
あぁ、彼女の口調につられて俺まで砕けた話し方になってしまったな。
本来なら彼女には敬語で話すべきなのだろうが。
「いーの!いーの!誰も見てないんだから!」
俺の質問にん?と足元を見た美女はケラケラと笑い出した。
「いや、俺が見てるぞ。」
珊瑚や貝で彩られた華奢なサンダルのまま、つまり土足のまま神聖な石碑の上に立ち、「結構安定してんのよ、ここ。」と足踏みすらしてくる彼女にさすがの俺も頭を抱えたくなる。
「ま、細かいことはいーじゃん?
ほら、誓うなら早く誓いなよ。
この海の女神ゼリンダ様が聞いてやるからさ!」
そう、この目の前で仁王立ちする女性は、我ら海の民が敬愛、崇拝する海の神...おそらく。
そして、今日俺は成人の儀の習わしで、この海底神殿に1人で赴き海の神に成人の報告と海への誓いを捧げなくてはならないのだ。
儀式は滞りなく今のところ済んでいて、予想外のトラブルも何も起きていない。何も起きていないが。
「じゃん、じゃん聞くよー?」
アハハハハーと女神が手をヒラヒラさせて笑う。
予想外のトラブルはなにも起きてはいないが、海の神がまさかこんなフランクな女神だとは予想外だった......。
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