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王子と私の婚約破棄戦争  作者: 翡翠 律
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第74話

久々に本編です。あの方の登場......!?




「ま、まさか返り討ちにあうとは......。」


 王宮内の渡り廊下にある太い柱にしがみつきながら、殿下からの心理的ダメージで荒くなった息を整えていると、斜め後ろで背中をさすっていてくれたエルケが呆れたようなため息をついた。


「不毛ですよ。アリシアお嬢様。いい加減現状を素直に受け入れましょう。」


「だ、だめよっ。このままでは私の命がっ、それにゆ、夢の通りだと周りの人にも大迷惑がかかっちゃうんだからっ!」


「いえ、お嬢様が何かを企むたびに周りにすでに大迷惑がかかってます。先程なんて殿下のあまりの愛の重さとウザさ...いえ深さに周りの近衛兵や使用人達が直立不動で口から砂糖を吐いておりましたから。」


 砂糖を吐く?

 貴重な砂糖を吐くなんて勿体ないわよ?


「なんですか?そのキョトンとした顔は。アリシアお嬢様、何かすごい間違えた解釈しておりません?砂糖を吐くっていうのは......」


 言いかけたエルケが私の右前にざっと出て、私の胸前にに左腕をあげ、身をかがめた。


 王宮内で従者が主人より前に出る。

 つまりそれは、...主人に敵対する者が近づいてきたということを意味する。


 無言でエルケの視線を追うと、廊下の先、こちら側に数人の人物がこちらへと歩いて来るところだった。

 エルケが右手をお仕着せのポケットに入れ、戦闘態勢を取っている。

 例のガーランド家の倉庫につながるポケットだ。彼女はポケットの中で何かをグッと掴んでいるが、竹箒か何かなのだろう。エルケ、宮殿内で竹箒はだめよ。せめて室内用モップにしなさい。竹箒は外用だからね。


 心の中で必死でエルケを制していると、廊下の先を歩いていた集団が目で誰かを確認できるほどの距離まで近づいて来てた。

 相手側もこちらに気づいたらしく先頭にいた人物が口元を扇で隠しながら「あら?」とつぶやいた。



「これはこれは、ガーランド家の。」



 私の目の前でにこやかに笑い、弧を描く相手の瞳は天に愛されたかのように眩しい金色。顔を傾ける仕草にふわりと揺れるサラサラの髪は透き通った水面のように澄んだ水色をしている。



「レナーテ・フォン・エルドナドル公爵令嬢様......。」



 私が呼ぶ名前に目の前で余裕の笑みをみせたのは、『5人の王子と謎めいた王宮』の主人公、レナーテ様だった。


「ご機嫌麗しゅう、と言いたいところだけど、貴方のお付きの者はそうではなさそうね。」


 レナーテ様はあらまあと眉をあげる。


 エルケ、威嚇しすぎよ。と私は小さくエルケの耳元で囁き満面の笑顔でレナーテ様を振り仰いだ。

 いや、仰ぐよ。だって身長がぜんぜん違うもの。何この差は。主人公って容姿もチートよね...。


「オホホホホホホ。これは失礼いたしましたわ。

 私の侍女はちょーっと警戒心が強すぎるところがありまして。」


 エルケはまだ私の後方でガルルルっと威嚇する犬のような表情でレナーテ様御一行を見ている。

 何やらブツブツと呟いているから耳をすましてみれば、「あなた様のおかしな夢のせいで、お嬢様が奇行に走り私の仕事がどんだけ増えているとおぉぉ...」との内容だ。主人を心配して警戒してるわけじゃないのね、エルケさん......。


 しかし何故この廊下をレナーテ様が?

 この先は王太子であるレオンハルト様と第一王子アルフォンス殿下の執務室と居室しかないはず。


 ちなみにエアハルト殿下と第四、第五王子は廊下を渡り広間を超えさらに廊下を渡った反対側に位置する場所に部屋があるのよ。

 以上、アリシアちゃんのミニ知識でした...って言ってる場合じゃなかった。


 レナーテ様は確かに殿下達とは近い血筋の方で、幼馴染でもある。しかし謁見の間や庭園、パーティ会場などでお会いすることがあるのはわかるが、わざわざ執務室や居室に赴くようなことがあるだろうか?


 怪訝に思いながら彼女を見ると片腕に抱いている古びた分厚い本に気が付いた。

 そしてレナーテ様の後方の侍女のうちの1人が大きな鳥籠を抱えていることにも。


「古びた本に鳥籠......?」


 思わず小さく漏らした声は、どうやらレナーテ様にも聞こえてしまったようで、彼女は、ああこれねとその分厚い本を私の目の前に題名が見えるように表紙を見せて来た。


 その瞬間、



 バサバサバサバサッと本がはためいたのだ。



「うわっ!?」


 風圧で私の髪が浮き上がる。


「「きゃああっ。」」


 目の前で暴れる(?)本にレナーテ様の侍女達もキャーキャーと叫び慌てだした。すると鳥籠を持った落ち着いた雰囲気のボブカットの侍女がすずいっと前に出て、レナーテ様から暴れる本を掴み取り、問答無用で鳥籠に押し込んだのだった。


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