第72話
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なんてことなの!?
レオンハルト様は茶葉選びから、サンドイッチを食す順、はたまたスコーンの割り方、クリームの塗り方、持ち方、口の開け方、さらには噛む回数までもが私とまったく同じであった。
え、ちょっと待って?偶然といえども噛む回数まで一緒ってある??
「ふふ。驚いているようだけどね。先程言っただろう?僕がアリシアを見ていないときなんてないんだよ?」
「驚いているんじゃなくて皆さん引いてるだけですけどね。」
自慢げに語る殿下にラファエルがニコニコと答えた。
ど、どうしよう。
ここまでの質問に対しての殿下の答えによる相性診断の結果は全て満点...。あと数問質問があるとはいえ、このままだと50%以上の相性になる可能性が高いんじゃないかしら。
そう気づいて固まった私の視線の先にあるものが見えた。
あれは......!!
「うふふふふふ。」
俯いて笑い出した私に隣のエルケが心底嫌そうな顔で半歩離れる。あら、失礼ね。
「殿下。残念ですが、今回の質問の答えは私と完璧に相性が良いとは言えないようですわ。」
「ほう?それはなぜ?」
顔を上げて嬉々と述べた私に全く動じることもなく、レオンハルト様は余裕げに顔を少し傾けた。
傾けたと同時に、ふぁさりと彼のボサボサの銀髪が揺れて形の良い額が現れる。
「うっ......。」
「どうした?アリシア?」
急に顔を覆ってしゃがみ込んだ私に、さっきまで余裕めいていたレオンハルト様がガタンと椅子から立ち、こちらへと駆けつけようとする音が聞こえた。
しかし、私は目を瞑ったまま片手をあげ、大丈夫ですと彼を制止する。
「な、なんでもございませんわ。
申し訳ありません。ラファエルにお願いが。
推しの、いえ殿下のお髪が少し乱れて、額のあまりの綺麗さに私の水晶体が破損して網膜に大打撃が......いえ、お髪が乱れていらっしゃるようなので整えてくれますか?」
ああああああ!ゲームのイラストとは違って、なぜかボサボサな前髪が顔を覆い瓶底メガネ、そして目立たない黒づくめの衣装を着ていらっしゃるレオンハルト様に油断しすぎていたわっ。
銀髪の隙間からチラリと見えた神々しく美しい額の眩しさに目が耐えられないところだった...。
「普段からお髪は乱れていらっしゃるような気もしますが。」
「エルケ殿、それはつっこんではいけませんよ。」
椅子にかけ直した殿下のボサボサな前髪を側近のラファエルにぱぱっと元に戻してもらい、気を取り直した私は先程の話の続きをすることにした。
「こちらが私と相性が良いとは言えない理由です。」
私が片手で示した先に周囲の者達の視線が集中する。そこにはあるものが鎮座していた。
「「「ガトーショコラ!?」」」
そう、アフタヌーンティースタンドの最上段のスイーツは3種類あった。殿下はそのうちの2種類は召し上がられたが、このガトーショコラだけはお残しになられたのだ。
「わたくし、アリシアはスイーツが好きです。特にこのガトーショコラは私の大好物。残すことは考えられませんわ。」
無言で聞いている殿下に、どうですか?ばりに顔を上げて自信満々で私は告げた。
「ですので、殿下の召し上がれた順を辿るとこちらの矢印に進んでいただ......」
「アリシア、少しこちらに来てくれるか?」
「え?あ、はい。いかが致しましたか?」
それまで黙って私の話を聞いていたレオンハルト様が私においでと呼びかけた。私は執務机の前まで進み軽く略式の礼をする。
すると殿下は机から身を乗り出し私の肩をぐいと引き寄せるとその手に持っていた何かを私の口へと突っ込んできたのだ。
「どうし......むぐうっ!?」
いきなり何かを口に突っ込まれて目をシロクロさせた私だが、舌がほんのりと苦甘いその味を感じ取り、口に入った何かが一体何なのかを理解した。
ガトーショコラだ。
殿下は私の口に、最上段プレートに残していたガトーショコラをフォークで一口大に取り私の口に突っ込んできたのだった。
後書き
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