第64話
「あっ。」
「ん?どうしたの?」
文具店を見た後、私たちはいくつかの店を周り、そのあとお腹すいたよねと近くにあったカフェで軽食を食べて今は文教通りの近くまで歩いてきた。
文教通りに近づいていくとだんだんと書店や古書店などが増えてくる。その一つの小さな書店の前で、リオが一瞬足を止めた。
「いや、なんでもない。」
リオが再び歩き出そうとしたので、くいっと彼の袖を引っ張って立ち止まらせた。
「入ろうよ?」
彼より背が低いためしたから見上げて言う私に何故かリオが自分の口を覆いながら顔を背けた。
「上目遣いって...わざとか?わざとなのか?」
「へ?」
「いや、何でもない。アリィが良いならこの店も寄ってくよ。」
何やらボソボソ言いながら小さな書店に入っていくリオ。でも私は気づいていたのよね。リオはこの店に入りたかったんじゃなくて、その店の壁に貼られていたポスターに目を奪われていたことに。
本ならいつもフリックル男爵の書店に通っているリオは男爵の店で買うだろうし。
店内の本を手に取っているリオの横で、彼に気づかれないようにそのポスターを見た。
(なるほど。新刊の案内ポスターね。リオが見ていたのはきっとこの『世界の秘境にみる建築』だわ。
歴史的建築物が大好きだもの。んん?数量限定生産シリアルナンバー入り、表紙は箔押し本革仕様とは、すごいわね。)
お値段も結構するけど、町娘としてのアリィが買って彼に贈ったとしてもおかしくはない範囲の金額だ。
さっきのランチ代もリオが出してくれたし。
今日のお礼にリオにプレゼントするのはどうだろう。
予約商品みたいなので、ヨルク店長に頼んで発売されたら我が家に届けてもらおう。うん。そうしよう。
私が決意したそのときだった。
ざわざわと店の外が騒がしくなったのだ。
なんだろうと外を見ると馬に乗った3人の騎士が文教通りから平民街のほうに行くのが見えた。
文教通りは城を囲む貴族街と平民街の真ん中に位置する。
王都であるこの街で騎士たちを見ることは珍しいことではない。なのに街の人々がざわついているのは騎士は騎士でも常に街中で見る第五騎士団や凱旋などでパレードをする他の騎士団などでは無かったからだ。
(白いマントに白い制服!!近衛騎士!?)
なんでこんなところに王族を警護する第一騎士団の近衛騎士達が、要人がいるわけでもないのに......
そこまで考えて、ハッとしたのよ。
あ、次期王太子妃の私って、要人......でしたわ。
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