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依頼は終わったけど...

3日坊主で辞めた小説を1年以以上たったいま投稿していくスタイル

「居たぞ!あの通路だ!」

 俺は今追われている。

 だが俺は決してミスをしていない。

 予定通りターゲットをクリア。

 その後帰る時にもう1つの仕事。

 いや、タスクと言うべきだろうか。

 何故ならこれもまた依頼の内だからだ。

 これも達成して初めて仕事完了と言える。

 それはさっきマルマルが言ってた「犯人不明」の事だ。

 つまり証拠隠滅。

 それが残ったタスクと言う訳だ。

 だがこれはそこまで慎重にやる必要は無い。

 何せ依頼主の事を考えれば証拠隠滅しなくともそこまで困らない筈だからだ。

 要はポーズ。

 メッセージとも言う。

「我々は証拠隠滅しようとした。ところで藪蛇という言葉をご存知かな?」

 そう言うメッセージだ。

 だから俺は適当にカメラでも打っとけばそれで十分なのだが、個人的な事情でしっかりと隠滅したい。

 個人的な事情とは簡単に言えば「顔バレ困るからモザイクかけとこ」である。

 そう言う訳で出来る限り隠滅したい訳だが、結果として追いかけられてる訳だ。

 だがやっぱりミスはしてない。

 であれば何故追いかけられてるのか?

 それは分からないから先に誰が追いかけてるか考えてみよう。

 ターゲット?

 いや違う。

 間違い無くあいつはこの街の長であった。

 そしてこの手で確かに始末した。

 強いて言えば、自らを囮に嵌めたのかも知れないが、メリットがなさ過ぎる。

 ではマルマルか?

 これも恐らく違うだろう。

 これも同様だ。

 全く無いとは言い切れないが、理由が薄い。

 マルマルとはあった事こそ初めてだが、割と長い付き合いだ。

 お互いそれなりに儲けていて、要はwin-winだった。

 残った可能性は?

 例えば依頼主。

 有り得ると言えば有り得る。

 報酬の支払いを渋った結果が始末の可能性。

 だが今回の報酬はフロンティアがメイン。

 金なんてどっちにとっても端金。

 そしてフロンティアは向こうの悲願。

 自分で言うのも何だが、優秀な人材を手に入れるチャンスをその程度で棒に振るとは思えない。

 他の可能性はもう1つだけの様に思う。

 であるならばそれが正解なのだろう。

 それは『隣町の武力組織』だ。

 この前マルマルは「近くの村とおっ始める」と言っていた。

 つまりそこの手の物が運悪くこのタイミングで襲撃して来て、俺はこの屋敷の警備員と間違えられてる訳だ。

 だから言っただろう?

 俺はミスしてないって。

 ミスしてるのは俺を追いかけてる奴らと、このタイミングで俺を消し掛けた依頼主だ。

 あと情報を拾えなかったマルマルもだな。

 とは言え人のせいにするのは良くない。

 俺のミスは強いて言えばこの話に乗った事かな?

 取り敢えず責任転換は置いていて、この状態をどう切り抜けるか考えよう。

 まぁ、もう答えは出てるが。

 依頼主からは『ターゲットの始末』と『証拠隠滅』をオーダーされた。

 となると、目撃者はどうすれば良いか自ずと分かるだろ?____________________________________________


「それで誰も居ないわけね」

「当然だろ?『証拠隠滅』しなくちゃいけないんだ」

「まぁ、そうだね。依頼主からも今回の対応は高評価を頂いたよ。メッセージ性が強くなったとかなんとか」

「誰も帰って来なければ、当然警戒するからな。藪蛇なんて誰も触りたがらないわな」

「そう言うわけで、報酬が少し増えたからパァーと行こうぜ!」

「お勧めは?」

「おしろい屋さん」

「他は?」

「僕思うんだけどね。暗殺を警戒しながら食べるご飯は美味しくないでしょ。自分の立場わかってる?」

「『証拠隠滅』はしたぞ」

「念のためさ。依頼主が『証拠隠滅』したがるかもよ?」

「確かに。おしろい屋さん行くか。旨いしな」

「ああ、行こうか」

 ____________________________________________


「おっ!報酬が振り込まれたよ。取り敢えず一安心かな」

「...まさか今まで報酬の確認もせずに、俺たちは宴会してたのか?振り込めれなかったらどうするつもりだ」

「そんな事言ったって、ここは避難の意味も有るから何も頼まずの居座る訳にもいかないじゃない。あとどうせフロンティア行くなら金は要らないでしょ?」

「まぁ、確かに金は要らないけど、一言言ってくれても良いだろ」

「そうだね。今回は連絡不足だったかも。気をつけるよ」

「そうしてくれ。...しかしこれだと不公平だなぁ」

「何がさ」

「俺がお前に要求して、それを呑んだ訳だから、お前からも俺に何か要求しろよ」

「なるほどね。確かに今後も相棒続けるなら、お互いの不満点は言い合うべきだね。じゃあ今回はこれにしよう。僕の事をお前って呼ばないで」

「そりゃあ、構わねえが、じゃあなんて呼べば良い。マルマルは言い難いから出来れば他がいい」

「そうだね。僕としてもハンドルネームで呼ばれるのは変だし、他がいいかな」

「因みに本名は?」

「そもそも無いかな」

「そんなもんだな」

「そう言う君は?」

「有った気はするけど、覚えてない」

「自分の名前を忘れる事なんて有るのかい?」

「つっても実際忘れてるしなぁ。そんな事よりお前の呼び方だよ。何がいい」

「うーん。...じゃあ君が名付けてよ。それが今日から僕の名前って事で」

「おいおい。名前はそんな適当なノリで付ける物じゃ無いぞ」

「でも名前ないし。君が全力で良い名前を付ければ解決でしょ?」

「そりゃまた責任重大だな。そこまで言うなら考えとくわ」

「どうせなら今考えてよ」

「急に言われても、俺にネーミングセンスは異次元だぞ」

「良いから良いから、取り敢えず言ってみなよ」

「取り敢えずって言うならそうだなぁ、◯ちゃん製麺だな」

「...それはまた凄まじい名前だね」

「な?言ったろ」

「でもな〜。今決めてくれないと少なくとも今日はオマエって呼ばれちゃうしなぁ」

「...そんなにオマエって呼ばれたく無いのか?」

「そうだね。呼ばれたく無いね」

「ハァ。しゃあねえし本気出すかぁ」

「お! 遂に君の本気が見られるのか。本気と言うからにはそれはそれは素晴らしい名前をいただけるはず!」

「よし、じゃあ今日からオマエは◯ちゃん製麺だ!」

「その流れはもう良いよ」

「じゃあ煽るな」

「了解! 大人し待ってるよ」

「そうしてくれ」

 ____________________________________________


「思いついたぞ」

「何がさ」

「名前だよ名前。オマエが考えろって言ったんだろ」

「そうだけど、随分早いね。あれから10分位しか経って無いよ?」

「ああ、俺とは思えない程のネーミング力だ。自分でも驚いてる」

「ほほう。凄い自信だね。聞かせてよ」

「おう! それじゃあ発表だ。今日からオマエはアンドウだ!」

「アンドウ? 一体どう言う意味だい?」

「偉人の名前さ。ニュートン見たいなもんだ」

「じゃあ、ニュートンで良いじゃん」

「まあまあ、そう言うなアンドウ」

「と言うかさぁ、偉人と言うからには逸話が有るんでしょ?教えてよ」

「おう良いぞ! アンドウも良く知るアレを発明した人だ。」

「なんだよ勿体ぶるな」

「インスタントラーメンだ。」

「...それはまぁ、凄いけど何とも微妙だね」

「なっ! 安藤さんに失礼だろ!」

「確かにそうだけど、アンドウは馴染みが無いな」

「確かにここらの名前じゃ無いな」

「でしょ? 馴染みの有る名前でやり直し!」

「シャーねえ。約束だしな。...しかし偉人の名前は有りだと思うんだ」

「ここらの偉人? 僕は知らないよ」

「俺だってこの辺の偉人なんて知らないよ。要は馴染みが有れば良いんだろ? だったらここらじゃ無くても良いだろ」

「なるほどね。確かにニュートンとかなら馴染みあるかも」

「...やけにニュートン推すな。ニュートンが良いならそれで良いけど?」

「別にそう言う訳じゃ無いよ。さっきちょろっと話に出たでしょ?だから咄嗟に出ただけさ」

「そうか。...面倒だからもうニュートンでよくね?」

「...まぁ、別に良いけど、流石にそのままは辞めない? もう一捻り」

「そうだな...じゃあ、ニャートソでいいか」

「パチモン臭えな。そう言う事じゃ無いんだけど」

「じゃあ、ニャウトソ」

「語感がなぁ、もう一声」

「ニャワトン」

「語感は悪くないけど、うーん、もう一声」

「ワトロン」

「ああ、割としっくり来た」

「そうか。じゃあ決まりだな。これでお前は今日からワトロンだ。改めてよろしくなワトロン」

「うん。こちらこそ宜しく!」



「さて、ワトロン。ワトロンとしての初仕事がやってきたぞ」

「うん。気付いてるよ。コレは不味いね」

「どっからバレた?てか、何処のもんだ?」

「ルートは不明だけど、所属は大体予想つくさ。十中八九DYSAMだろうさ」

「やっぱりそう思うか?」

「むしろ他に何があるのさ。町長さんの仇なんて誰も取らないよ。今頃後釜争いだ。残るはDYSAMか、強いて言えば近所のチンピラかな」

「後者であることを期待したいところだな」

「違い無いけど、僕は現実主義者なんだ。最悪を想定しようじゃないか」

「...思ったんだが、どうせフロンティアへ向かうんだ。捕まっても変わりないんじゃないか?」

「...正気かい?」

「...俺たちは人間だ。違うか?だったら会話しようぜ」

「僕はパス。先に逃げてるから、うまくいきそうなら呼んでくれ」

「わかった。一旦別行動だ。連絡つくようにしとけ」

「僕は大丈夫だよ。そっちこそ気をつけてね。じゃあお先に失礼」

「ああ」

 さてワトロンは裏口へ向かった。

 入り口からはガチャガチャと物音が聞こえる。

 パワードスーツを着ているせいだろう。

 DYSAN製ともなれば、ライフルくらいなら弾き返してまうらしい。

 お客様がどの程度の御身分かは分からんが、程度はどうあれ、拳銃は撃つより銃底で殴った方が効果が高そうだ。

 少なくとも弾代はかからない。

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