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ロイヤルリリー  作者: violet
8/23

祭り

「レッド、どうだった? 私の踊り」

そう言って巫女に選ばれた娘、エロニカがレッドに近寄る。


「素晴らしかったです、さすがは今年の巫女」

踊りなど見ていなかったので、適当にこたえる。

「あちらで神官がお呼びですよ」

そう言いながら、レッドは距離をとる。

仕事中も押し掛けてくるエロニカに、レッドフリートはうんざりしていた。

「警備があるので」

背を向け去っていこうとするのを、エロニカが引き留めようとした時、一人の男が前に出てきた。


踊りを奉納して祭りが終わったといっても、たくさんの人間が集まったままなのだ。

それでなくとも、巫女の行動は注目されている。

「よう、少しばかり顔がいいと女にもてるなんて、いい気になるなよ」

どうやらエロニカの知り合いらしく、エロニカの方を見ている。


それも無視してレッドが、歩こうとするのに腹をたてたのか、男が殴りかかってきた。

「きゃあ!」

周りから悲鳴があがる。

周りの人間が巻き込まれないように、身体をかわしてレッドが男の後ろに回ると、今度は見物人達から歓声があがる。

女性達は完全にレッドの味方である。顔がいいだけで有利なのに、強いのだ。


男の右腕を後ろからねじって、動きを止める。

「俺は彼女に興味などない、迷惑だ。」

「きゃーーー!!」

レッドフリートの言葉に反応したのは女性達だ。

巫女さえそでにする傭兵。

異様な熱に辺りが包まれる。



ディーヌは貴賓席から、一部始終を見ていた。

巫女に選ばれた美女に興味を持たないことに安心する自分と、嫌味な男と思う自分がいる。

そのレッドフリートが空を見上げているので、ディーヌもつられて空を見た。

同じように、祭りの見物人やエインズ伯爵が空を見上げた時に、大きな影が空に現れた。


魔獣だ!

空を飛ぶ魔獣など聞いたことがない。

大きさも牛ほどはあるだろう。

一瞬でパニックになり、祭りに来ていた人々が逃げ出し、警備兵が誘導をするが混乱は大きくなるばかりだ。



「伯爵!」

逃げ惑う人々の間から、レッドフリートが貴賓席に駆けこんできた。

「すぐに軍に討伐隊を申請してくれ。第2部隊キリンジャーを指名だ。」

キリンジャー部隊長、まだ若く王太子の右腕と誉れ高い。


それだけ言うと、レッドフリートは群衆の中に戻って行った。

「ゲン! アイズ!」

レッドフリートは二人を呼ぶと指示を出す。


「ゲン、エインズ伯爵を屋敷まで護衛しろ。

アイズは俺と、あの魔獣を追う。

他の警備は手分けして、みんなを街まで誘導しろ。北門と南門に分けるんだ。」

人々は魔獣が飛び去った北を避けて、南門に集中したためにパニックが起こっている。

レッドフリートとアイズは祭り使われた馬に飛び乗ると、北門に向かった。




ゲンが巨体をいかして、人々を押しやって貴賓席にきた。

「伯爵、お屋敷まで護衛いたします。

どうぞ、こちらに。」

父親が当然のように、彼の言葉を受け入れるのをディーヌは複雑な思いで見ていた。


「お父様、彼は?」


「ディーヌ、今は言えない。

だが、普通の傭兵ではないのだろう。

君は知っているのか?」

伯爵はゲンを見た。


「短い付き合いですが、一緒にいるとわかります。

今は屋敷に戻る事が先決です。あの魔獣1匹だけなのか、他にも飛んでくるかもしれません。」

ゲンは巨体のために、知能が低く思われがちだが、それでは傭兵として生き残れない。

あの魔獣が草食ならばいいのだが、と誰もが思っている。



その夜遅く、屋敷に戻ってきたレッドフリートとアイズは伯爵の執務室にいた。

ゲン、アイズ、レッドフリートとエインズ伯爵、ディーヌを連れて来た夜のようだ。

だが、空気はもっと緊迫していた。


「肉食です」


アイズが、羊が捕食されました、と報告をする。


「そうか」

伯爵の声は低い。

「奴の捕食対象が羊だけとは限らないだろう」


「飛翔能力があるということは、国境を越えるのは容易だということです。

奴がこの領地にいるものなのか、他領、他国からきたものかもわかりません。

そして、他領、他国に行くかもしれません。

山狩りをしましょう。」

レッドフリートが地図はありますか、と尋ねながら言う。


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