表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロイヤルリリー  作者: violet
7/23

深まる疑い

屋敷までディーヌを送ったレッドフリートは祭りの会場に戻って行った。外套はディーヌにかけたままだ。



ディーヌは、自室で外套を握りしめていた。最高の手触りだ。

極細な毛を織り込んでいるのだろう、とても暖かい。高額であるのがわかる。

傭兵って儲かるのね、と思いながら、小雨の中を帰った道を思い出す。


カッコよかったのよ。

プラチナブロンドの髪が雨に濡れて、額に張り付いていた。

ドキドキと心臓の音が聞こえるかと思うぐらいだった。

私は領主の娘だから優しくしてくれるのだ、と自分にいいきかしながら、レッドの後ろを緊張して歩いた。



コンコン。

ノックして部屋に入ってきたのは父親のエインズ伯爵。

「家令から聞いた。

また伴も付けずに街にでたそうだな、雨に濡れたろう。

なんだ、それは?」

伯爵は、ディーヌの手にある布を見る。


「男物の外套ではないか」

「街で雨の中を帰ろうとした私に、警護の者が被せてくれたのです」

ディーヌの言葉に、ふむ、と考えながら伯爵が手に取る。

「これは、私から返しておこう」


手にとってわかる、これは最高級の生地だということが。

多分、王侯貴族しか手にする事はできないだろう。

「これは、誰が?」


「レッドという傭兵です。先日、お父様の執務室にいた」

「3人いたな?」

「その‥‥、シルバーブロンドの」

ディーヌの言うシルバーブロンドは、王太子と瓜二つの顔の男だ。


やはり、という考えにいたる。

エインズ伯爵は、王都や聖女の情報が詳細にはいるように手をまわしている。

百合の痣のある娘を、内密に育てる為に必要だからだ。


王太子が病気療養と称して王家の領地に、向かったのは1年近く前だ。

それから、王太子の情報は入ってこない。


レッドという傭兵のことも調べたが、ほとんどわからなかった。

腕がたつと噂があるぐらいだったが、それはここ数ヶ月のことだった。

姿を消した王太子、どこからか現れた王太子と同じ顔の傭兵。

王太子の名はレッドフリート、傭兵の名はレッド。



もし王太子だとしても、なんの為にここに来ているかがわからない。

慎重に様子をみなければならない、と伯爵は思うのだった。


夜遅く戻ってきたレッドフリートを訪ねた伯爵は、外套を渡しながら情報をえようとしたが、上手くはぐらかされてしまった。

それは、頭の回転が速いことであり、ますます王太子ではとの疑惑を深めた。




翌日は祭りの最終日で、今年選ばれた豊穣の巫女が踊りを捧げて終わる。

領内の未婚女性から毎年選ばれ、選ばれると良縁に恵まれると人気なのである。

神獣である竜に供物を捧げ、踊りの奉納をすることで、今年の豊作のお礼と来年への祈願になるという。

祭りに参加している娘達から、アイズやレッドフリートは人気であった。直接モーションをかけてくる大胆な女性もいる。

レッドフリートは無視しているが、女性の方の熱が高まるばかりで、待ち伏せしているほどであった。


伯爵家も王都の学校に行っているディーヌの弟以外は、奉納の踊りをする古い神殿に来賓で来ている。

レッドフリートは警備をしながら、意識はディーヌにいっている。

顔を見るだけでも嬉しい。戻ってきた外套を着ているが、少しの間でもディーヌが着ていた、と思うと、頬が緩むのだった。


豊穣の巫女に選ばれた娘より美しい、可愛いと、レッドフリートの恋する瞳はディーヌしか映さない。


それほどに見つめられると、ディーヌの方でも気がつく。

確かにカッコイイとは思うが、それで近寄って恥女のレッテルをはられるのはゴメンである。

それに、相手は傭兵。伯爵の娘である自分が好きになったら辛いだけだ、とストッパーをかける。


盛大な拍手が起こり踊りが終わったと気がつく。

瞳は踊りを見ていても、頭はレッドのことばかり考えていた。あわてて拍手をしながら、立ち上がろうとする。


目に飛び込んだのは、巫女に選ばれた娘がレッドに近寄る姿だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ