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ロイヤルリリー  作者: violet
2/23

レッドという傭兵

「レッドー!」

巨体を揺らしてゲンがレッドを呼ぶ。


レッドフリートは傭兵登録をすると、すぐに仕事を見つけた。

商人の護衛である。

並外れた武術と知能を持っているレッドフリートは、どこででも生きていけると自信があった。

だが、その自信はすぐに潰されることになった。


並外れた力がレッドフリートなら、世の中には武術だけとか、悪知恵だけなら人外というのが僅かながらいるのだ。

竜の力が覚醒していないレッドフリートは、人の力でしかない。

武術も知識も、戦争や執務としては高度なものであったが、実践的ではなかった。


商人の護衛で知り合ったのが、ゲンとアイズである。二人がレッドフリートを打ちのめしたのだ。

ゲンは力では敵うものはいない。アイズはスピードがダントツだ。

百合の紋章を身にもつレッドフリートは特別な王子として育てられた。剣も知識も、苦もなく身に付いた。

だが、街にでてみると、知らないことがいっぱいであった。



山岳地帯で積荷を狙った盗賊団に襲われた。

商人達を馬車に隠して、乱戦が始まった。

「レッド、右だ!」

ゲンの声にレッドフリートが馬車の右手に回る。

辺りのごろつきの集団にしては統制がとれている、ボスがいるのだろう。


ザッ、剣を握りしめたレッドフリートが5~6人の盗賊に斬り込んでいく。

傭兵に身をやつしていても王子である。自国を荒らす盗賊団は殲滅したい。


逃げる盗賊達を追いかけ、ボスはどれだと気を巡らす。


みつけた。


あきらかに動きが違うのが一人。

その時には駆けだして、剣を振り上げていた。

ザンッ!!


ボスを斬った瞬間に、盗賊が斬りかかってきた。

アイズが駆けつけ後ろから援護する。

「助かった、アイズ」

「よう、それが親玉か」

そうだ、と言わんばかりにレッドフリートが(うなづ)く。


腕のたつ3人は仕事が重なることが多く、半年も過ぎる頃にはつるむようになっていた。

「こっちも終わったぜ。金を貰ったら酒場に行くぞ」

ゲンが大股で歩いてきた。

よう、とアイズが声をかけている。

「レッド、お前もだぞ。その顔があると女が寄ってくるからな」

次の街まで隊商を守れば仕事は終わる。

血の臭いに魔獣達が集まる前に街へと向かう。




仕事を終え、酒場でアイズが話をきりだした。

「この後はエインズ伯爵領の祭りの警備に行かないか?

報酬はさほどではないが、祭りで旨いものが食える。」

「たまには、のんびりするのもいいかもな」

エインズ伯爵領、レッドフリートは伯爵の顔を思い出し、娘と息子がいるはずだが、娘は王宮の社交に出て来たことはないなと思う。たしか、領地で病気療養中の届けがあった。自分と同じだと苦笑いする。


「レッド、何しけた顔しているんだ。」

「ああ、考え事をしていて」

そうか、とそれ以上は詮索しないアイズ。

伯爵家の三男で、軍隊に入ったが飛び出したらしい。

この腕前なら昇級できたろうに、と言ったら笑っていた。

軍は腕前よりも、家柄、爵位持ちが優遇されるんだよ。上官の目は腐っているからな、それがアイズの答えだった。

自分が竜にならず王太子として残れば、軍を大改革してやる、とレッドフリートは思う。


ゲンは既に好みの女性を見つけたらしく、部屋にあがっていった。

レッドフリートとアイズが、大抵二人で飲みあかす。

アイズは、かなりの国を回ったらしく、諜報としても生きていけそうだ。


「エインズ伯爵家の令嬢は、僕ら傭兵にも気さくに声をかけてくれる」

アイズの言葉に違和感を思う。娘は病気ではないのか。

「病気療養で領地にいると聞いているが?」

「どこで聞いたかしらないが、普通だったぞ」

年頃の娘を社交にも出さずに領地においているのはなぜだ?

百合の痣があるから、隠しているのではないか?

いや、そんな簡単に見つかるはずもないだろう。

レッドフリートは可能性を、会う前から否定している。


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