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ロイヤルリリー  作者: violet
17/23

王太子の身分

医師の治療の間、侍女達は食事を用意していた。

エインズ伯爵は、夫人を部屋に送っていって戻ってきていないので、ディーヌが指示をだしている。


もう、あれは王妃として問題ないのではないか。

(はかな)げに見えるディーヌだが、有事にはしっかりしている。

王都で茶会にあけくれる貴族の令嬢と、自然の中で様々なトラブルを体験して育ったディーヌは違う。

レッドフリートはディーヌが眩しくてしかたない。


配られた食事を取りながら、キリンジャーはレッドフリートを見ていた。

じっとディーヌを見つめるレッドフリート。さすがにディーヌも気が付いているらしく、チラチラとレッドフリートを見ている。

側にいるこちらが恥ずかしくなるぐらいである。


「殿下」

「ああ、悪いな。待たせた」

レッドフリートはキリンジャーの隣に座ると、皿に盛られた骨付き肉に手を伸ばした。


「あの飛獣は、騎獣として使えませんか?」

「私も最初は考えた。卵を見つけた時に調教できないかと。」

レッドフリートは首を振りながら、キリンジャーに答える。

「だが、一瞬で諦めたよ。

肉食で生態もわからない。リスクが大きすぎる」

遠征で常に食料が手にはいるとは限らない。


「何故にここに?」

それを尋ねたかったのだろう、誰にも聞かれないように声を小さくしてキリンジャーが問う。


「聖女を探して国をまわるためだ」

キリンジャーは、レッドフリートの話を聞いている。

「王家は特別な血をひいている。

それに聖女は不可欠な存在だ。

王家の神殿にいるのは聖女ではない」

「特別な血?」

「時が来るまで話すことはできない。

その時を来させないために、聖女が必要だ」

レッドフリートはディーヌを見つめている。


「あの伯爵令嬢が聖女なのですか?」

キリンジャーもディーヌを見る。重傷者は別室に移したので、軽傷者に薬を配っているようだ。

「そうであって欲しいと思っている」


「あのドレスでは、百合の痣があるかわかりませんね。

首もとまで襟がある」

そう言いながら、キリンジャーが立ち上がろうとする。

「痣があるか、聞いてきます」


驚いてレッドフリートがキリンジャーを押さえ付けた。

「聞いて逃げられたらどうする!

痣を公表する気があるなら、神殿に報告なりしているはずだ」


「たしかに」

キリンジャーが座り直す。


そこにアイズとゲンがきた。

昼間の戦闘で、お互いの腕がわかると、第2部隊と傭兵達は信頼に近いものができた。

成体の飛獣を討伐するには、全員で協力せねばならなかった。


「よう、レッド。そろそろ俺らにも事情を教えてくれよ、殿下?」

アイズがキリンジャーを指さす。


キリンジャーがレッドフリートを、殿下と呼ぶのを聞いていたらしい。


「黙っていて悪かった。

私は王太子レッドフリートである」

殿下と呼ばれるには、王族であると思っていたが、王太子とは思いもしなかった。

「は?」

間抜けな声がでた。


アイズはレッドフリートのキズを見た。

傭兵として、自分達と同じ前線で戦った仲間だ。

こうやってケガをしている。

後ろの安全な圏内にいて、指示を出しているだけの王族ではない。


アイズは、ニッと笑って親指を立てた。

「俺は自分で見たものを信じるさ」

一緒に戦ってきた信頼がある。



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