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ロイヤルリリー  作者: violet
16/23

傷の手当て

無傷の者がいない程の戦闘をして、第2部隊とレッドフリート達は屋敷に帰って来た。

重傷者を馬から下ろし、客間に寝かす。

家令に医者を呼ぶ指示を出すと、エインズ伯爵はレッドフリートに言った。

「殿下、治療をいたします。こちらにお休みになってください」

「私より、重傷者を先にしてくれ」


レッドフリートは、興奮が覚めないのを感じていた。

仕事の後は、こういうこともあったが、今回は次元が違う。


あの百合の群生地に行った時からだ。

ディーヌに包帯を替えてもらった後、睡眠もとれていない。

眠気がないのだ。


卵は全部潰したが、幼体と成体はかなりてこずった。

とくに成体は、飛ぶことを封じたから倒せたが、飛んで逃げられるところだった。



「お父様」

ディーヌが、帰還を知ったのだろう。

部屋から飛び出してきた。

伯爵夫人とディーヌは、一緒に待っていたらしい。

「きゃあ」

伯爵夫人が血まみれの一群を見て、今にも倒れんばかりにふらつく。


「コニー」

エインズ伯爵が、夫人を支える。

「妻を部屋に連れて行きます」

レッドフリート達にそう言うと、伯爵夫人を伴って屋敷の奥に向かう。


「医者がすぐに来ます」

ディーヌは、侍女や侍従に大量の湯や水を用意させた。

タオルをお湯に浸し、固く絞って男達に渡してまわる。

自分で身体を拭けない重傷者には、そっと血を拭き取っていく。

侍女達に交じって、ディーヌ自身も看護をしている。


それを、眺めてため息をもらしたのはレッドフリート。

「なんて、優しいのだ。王都の聖女候補などとは比較にならない。」

心の声駄々漏れである。


「殿下?」

思わず聞いてしまったキリンジャーが、レッドフリートに確認する。

「あのご令嬢は?」

「エインズ伯爵令嬢のディーヌだ」

キリンジャーも山へ出立前に玄関で見かけたと思い出す。


王太子であるレッドフリートは、立場上令嬢達には公平で、誰かを特別扱いしなかった。それは神殿の聖女候補達も同じだ。

だが、今はディーヌ以外はどうでもいいと思っている。

「私が先に目をつけたのだからな、後から来てどうにかなると思うなよ」

ディーヌは先着順ではない。


「殿下、私は」

キリンジャーの言葉を遮ってレッドフリートが続ける。

「やっと接してくれるようになったのだ。他の隊員にも厳しく言っておけよ」


「レッド、ケガは大丈夫ですか?

昨日のキズも癒えていないのに」

ディーヌがタオルをレッドフリートとキリンジャーに渡すために近寄ってきた。

キリンジャーは、受け取ったタオルで血を拭いているが、レッドフリートはディーヌに拭いて欲しいらしい。


「こんなケガたいしたことないから。ただ昨日のキズの包帯が上手く替えれなくて」

「まあ、まず血を拭くのでお座りになって。

包帯を替える前に血を拭きます、痛くないですか? 」

ソファーに座って右腕を出すレッドフリート。

二人の会話を唖然とキリンジャーが聞いている。

キリンジャーだけでなく、周りも注目のあまり静まり返ってしまっている。


ふと、ディーヌがキリンジャーの方に顔を向けた。

「軍人様も、おケガは大丈夫ですか?」

「ご令嬢、私は第2部隊長のハイデル・キリンジャーと申します」

キリンジャーが礼をすると、ディーヌの頬が赤くなった。


「まて!」

あわてたのはレッドフリートだ。

ディーヌが、まるでキリンジャーに好意を持っているように見える。

思わずレッドフリートがディーヌの手を取ると、ディーヌの頬は真っ赤になる。

「レッド、あの、手を」

ディーヌが(うつむ)いてしまう。


「おいおい、レッド何してんだ」

周りの空気を無視して声をかけたのはゲンだ。

キリンジャーに至っては、レッドフリートを見ていられない。見ている自分が赤くなってしまうほどだ。

なにしているんだ、王太子殿下。



「医師が到着いたしました。大量の薬と診療材料を運んでいますので、手伝っていただけませんでしょうか?」

家令が扉を開けて部屋に入ってくると、傷の少ない兵士に声をかけた。

まるでそれが合図かのように、レッドフリートとディーヌに集まっていた視線が離れた。

すぐに喧騒の渦になり、重傷の兵士の元に医師が案内された。


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