表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロイヤルリリー  作者: violet
11/23

夜営

ガルルウ!

魔獣の鳴き声がする。


魔力がある動物を魔獣と呼ぶのだが、ほとんどは魔力が弱い野生種で肉食が多い。

希に強い魔力のある火馬のような種もいるが、人の生活地帯に出てくることは滅多にない。


夜営の火を消さないように交代で番をする。

魔獣の声がするが、さほどの脅威にはならない。

レッドフリートはケーデルリア神官と火の番をしていた。


「私は山を降りたら、エインズ伯爵領の街に滞在します。

殿下はどうされるのですか?」

「私は元より、傭兵としてエインズ伯爵邸で世話になっている。

飛獣のことを調べる為に山に来たのだ」

パチパチと、焚き火の火がはねる。

小枝と一緒に魔獣よけの香をくべる。


「街では凄い噂になって、人々を不安にさせている」

ケーデルリアも見たと言う。

祭りでは見かけなかったので、別の場所から飛獣を見たのだろう。


「殿下、聖女の魔力は自分の意志とは関係なく漏れるのです。

その為に神殿に集められるのです」

だが、とケーデルリアは言葉を止めてレッドフリートを見る。


「神殿にいるのは聖女ではない、ということか?」

レッドフリートに答えるようにケーデルリアが頷く。

「それは、神殿の秘密だろう。私に洩らしていいのか?」


「私は、あの飛獣も、この山の異様な気配も聖女が原因と考えてます。

この近くに聖女はいる。

共同戦線をとる方がいいでしょう」

「まるで、聖女は悪役だな?」

「今の状態ならば」

だから、子供のうちに神殿に集めて教育をするのだ、と、言わんばかりである。


「王家にとって聖女は特別の存在だ。王家の存在とともにある」

けれど、とレッドフリートが続ける。

「心が聖女に向かない」

それは? と聞こうとしたのか、ケーデルリアが顔をあげたが、しばらく間をおいて違う言葉が出た。

「そうですか・・」



交替で寝ているはずのアイズは、小さな声で話される二人の会話に耳を傾けていた。

はっきりとは聞こえないが、殿下と聞こえた。

傭兵になる人間には秘密が多い。

アイズもだ。

そして、レッドもだったか、と思う。



レッドフリートが飛び出し、ケーデルリアも追いかけていた。

「夜行性の魔獣だ!」

レッドフリートが叫んだ時には、アイズはすでに剣を持っていた。


魔獣避けの香が弱かったのか、数匹の魔獣の襲撃であった。

ゲンもすでに戦っている。

魔獣の住む山に入っているのだ。熟睡している者などいない。




そうやって3日が過ぎた深夜、レッドフリート達はケーデルリアと別れ、屋敷に戻ってきた。

疲労困憊(ひろうこんぱい)という様相で、エインズ伯爵に報告をすると自室に戻った。

数種の魔獣と遭遇したが、飛獣を見つけることはできなかった。



レッドフリートは庭にいた。

ディーヌの部屋に向かって報告することと、もしかしたら会えるかもしれないと思ってだ。


ディーヌはすでに眠りについていて、レッドフリート達が帰ってきたことを知らなかった。

レッドフリートがどんなに待っても、ディーヌは朝まで起きないだろう。


だが、ベルは違う。ゲンが帰ってきたことがわかったらしい。

ワン!

咆えると、ディーヌのベッドから降り、駆けだした。

ワンワン!


「ベル? どうしたの?」

起こされたディーヌも何気に窓の外を見る。

姿が見えた気がした。

ベルの後を追うように外套を手に取り部屋を飛び出す。


「レッド、レッド」

小さな声だが、それはレッドフリートには聞こえる。

「ディーヌ」



姿も見えない、まだ距離もあるのに聞こえる。

ディーヌの声だけは聞き逃さない。


月の光に照らされて二人の姿が浮かぶ。

レッドフリートは魔獣との対戦でケガをしていた。

包帯を巻いた腕が、ディーヌの目に飛び込んできた。


「レッド、ケガを」

恐る恐る、ディーヌがレッドフリートの包帯が巻かれた右腕にさわる。

「たいしたことないよ」

レッドフリートは、ディーヌが心配してくれていることが嬉しい。

「血が滲んでいる」

肩に傷を負って、右の上腕に包帯を巻いているのだ。

「薬を塗って、包帯を替えるわ」

ディーヌとレッドフリートはサロンに入っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ