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ロイヤルリリー  作者: violet
10/23

神殿からの使い

ギャー、と泣き声が聞こえる方向に足を向ける。


領地に入る時に、魔獣に襲われた峠から山に入ると、すぐに魔獣と対戦した。

穀物地帯ということで、もとより魔獣の多い地帯であったが、最近は肉食の魔獣が増えているらしい。


倒した魔獣を見るアイズが、おかしいと言う。

「色が違います。

従来この種は茶色ですが、これは赤といってもいいほどだ」

ゲンが魔獣の腕を持ってひっくり返した。

「なるほど、個体の特徴という程度では収められないほど違うな」

「亜種か」

「そうかもしれません、亜種がいるなら、新種も可能性がある」

飛翔する魔獣を新種と考える。


「そして何より、凶暴になっている。

この種は肉食ですが小動物を獲物とし、人間程の大きさの物は襲わないはずです」

アイズが背中のコブのような背びれを確認している。


草をかき分け、山の奥に入って行く。

山脈が走る広大な地域は、未知の場所が多い。

この山脈が北風を遮り、エインズ伯爵領を穏やかな気候にしているのだ。


神竜の地といわれる場所の一つでもある。

太古には、竜がいたのかもしれない。


「無理するなよ、今は調査だけだ。

この人数でどうにか出来るものではない」

レッドフリートが先を行くゲンに声をかける。


そのゲンがアイズとレッドフリートを呼ぶ。

「人がいる。」


この山の中に自分達以外の人間がいること自体が信じられない。

もとより魔獣の多い山であると知られているからだ。

足音を気にしながら、ゲンの指さす方向を見る。


男が一人いた。

魔獣の多い山に入るほどだ、向こうも気づいていた。


お互いに近づいて気が付く。

知っている顔であることに。話したことなどほとんどない。

その男は、王都の神殿、奥深くに大神官の側仕えの神官だ。

次期大神官候補の一人というのが正しい。


「ケーデルリア神官、何故貴方がこんなところに。ここはとても危険だ」

「その言葉はそっくりお返しします」

カサッと草を踏みながら、ケーデルリアが近寄って来る。


「アイズ、ゲン、こちらはケーデルリア神官だ」

ただの神官ではなさそうだ、とアイズは思っている。

レッドも貴族の次男、三男という雰囲気ではないが、この神官も高位神官であるとわかる。


「ケーデルリア神官、傭兵仲間のアイズとゲンを紹介しよう」

傭兵仲間の言葉で、悟ったようにケーデルリアは、にこやかな表情でアイズに手を差し出した。

高位神官が、王太子が病気療養していることを知らないはずがないのだ。


ケーデルリアと握手しながら、アイズがレッドフリートに問いかける。

「レッドの知り合いということなら、共同戦線がいいのだろうな。

神官殿の手は武官の手だ。俺の知る教会の牧師達とは違うな」

次はゲンと握手しながら、ケーデルリアが答える。

「我々は、神殿を守っています。それは、次代を探すことも含めて。

才能のある子供を探して、国中を巡ります。」


ケーデルリアは、レッドに振り返る。

「今は、レッド殿と同じ者を探している。」

聖女という名の魔女を、と心の中でつけたす。

神殿に伝えられる使命、それは死命でさえある。


「それより、こちらに。面白いものをみつけました」

そう言って、ケーデルリアは先に立って木々の中を進んで行く。


レッドフリートは、ケーデルリアの言葉がひっかかる。同じ者を探している、それは聖女だ。

王家にとって、王子が竜になるのを止める唯一の鍵は聖女の心と伝えられている。

神殿に聖女候補が集められることは、聖女の保護という形の王家への協力かと思っていたが、他に何かある、そう思わざるをえない。



「この先です。」

急に開けた森の中は、光が差し込み、満開の百合が群生していた。


「この時期に、百合?」

ゲンが言うのももっともだ。百合の時期ではない。


「美しいでしょう? 魅入られる程に。

ここでは、生物が進化している。魔獣も、そう思いませんか?

先日、飛獣を見ました」

ケーデルリアは手に持つ杖で地面をつつく。

「我らは気を感じます。元々素質のある子供が集められ、神殿で訓練を受けます。

この地は、以前はこんなことなかったのに、とても異質な気を感じるのです」


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