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ロイヤルリリー  作者: violet
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百合の紋章

近くにいるのに、お互いがうまくいかない。そんなカップルのお話です。

楽しく読んでくださるとうれしいです。

一番大きく古い国であるロードクロス王国には、古い伝承がある。

300年に一度、聖女が現れる。

聖女として生まれた娘の胸元には、百合の花の痣がある。

奇跡を起こし、災害から人々を助ける娘。


ディーヌは、エインズ伯爵家の田舎の領地で育った。

家族に愛されて育ったディーヌには秘密がある。

胸に鮮やかな百合の痣があることだ。

痣よりもはっきりしていて、聖紋のようである。


百合の痣のある娘は、教会に引き取られ、神殿の奥深くで教育され育てられる。

生まれた娘に痣があった両親は、引き離されるのを恐れ、田舎で育てたのだ。


その頃、自称聖女という娘がたくさんいた。

聖女を出した家には、名声だけでなく、教会から褒賞が出るのである。

百合の痣のある幼い娘が教会に集められていた。中には、百合の刺青をいれられた娘もいただろう。

だが、教会に預けられても、ほとんどの娘は、しばらくすると聖女ではないと帰されていた。

残った娘は、大神官のいる王都の神殿で育てられる。

今も神殿の奥に聖女がいるかは知る事はできないが、ディーヌの両親は、たくさんの聖女は必要ないだろうからとディーヌを手元で育てたのだ。

百合の痣が知られないように、田舎でひっそりと。



王族と大神官のみが聖女の秘密を伝えている。

奇跡を起こす聖女との市井に伝わる伝承ではない、真実が秘められている。


王族は竜神の血を引くといわれ、300年に一度、血の濃い王子が生まれる。

右腕に百合の紋章をもって生まれてくるのだ。

百合の花に見える事から、百合の紋章と言われているだけで、それが百合で正しいのかは知る人はいない。

竜神の継承と言われているが、それも定かでない。

だが、百合の紋章の現れた王子は、知能、武術共に並はずれた能力を持っている。

そして20歳になると、竜へと姿を変え、天に昇ってしまう。


同じ頃に生まれるのが、百合の紋を持った聖女である。

百合の痣を持った聖女候補は数名いるが、成長とともに痣は薄くなり、やがて唯一人となる。

その娘が王子と心通わせた時のみ、王子は竜になることはなく、人として竜神の力を手に入れる。


天候を操る力、それが竜神の力だ。

国を豊かにも、滅ぼすこともできる力。

聖女は、王子を人に留めるための贄となる。

百合の痣の娘を集める為に、聖女という偶像を作ったのだ。


右腕に百合の紋章のある王子、レッドフリート・フォン・ロードグロスは18歳になっていた。

幼いころより、神殿で育てられた聖女候補達と交流をとってきたが、選ぶ事はできなかった。

そのうち、一人二人と娘達から痣は消えていき、自分の選択が正しかったと知る。


神殿にはまだ二人の候補が残ってはいるが、レッドフリートが興味を持つことはできず、神殿に行くことも遠ざかっていた。


だが、聖女候補の娘達は、聖女の真相を知らなくとも、王子に選ばれて王子妃に成れるなら何でもしたろう。

神殿で聖女と呼ばれ、大切にされるのも王族と関係があるからだろう、と察していたし、自分達には何の能力もないことも成長するにしたがい解っていた。

何より、レッドフリートは魅力的な王子だったのだ。




「また、手紙か」

レッドフリートは、神殿から届いた手紙にため息をつく。

聖女候補からの手紙はいつも会いに来て欲しい、こればかりだ。

建前は、国を災いから救う聖女だ、王族として大事にしなければならない。

だが、そんな時間があれば、どこかにいる聖女を探しに行きたい。


自分に残された時間は2年もない、聖女を見つけられなければ、竜となりこの国にはいられなくなる。

第一王子のレッドフリートが仮の王太子である理由だ。


準備は出来ている。

先延ばししていたが、もう時間はない。父王には既に許可を取ってある。

レッドフリートは、母親の王妃を訪ねた。


「王太子は病気療養で王家の領地で静養となります」

レッドフリートは王妃に別れを告げる。

病気のふりで領地に行った後は、一人旅立つ予定だ。

傭兵として、各地を回り聖女を探すつもりでいる。


家族との別れ、王太子としての執務も残したままである。

それとは別に、まだ見ぬ聖女への期待。

複雑な想いを胸にレッドフリートは旅立った。


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