Prologue
30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい。
だからといって、別に魔法使いになりたかったわけではない。
そもそも、そんなことを信じていたわけでもない。
ただ、女性に縁がなく、僕自身に度胸がなく、
気がつけば女性経験がないまま、今日、僕は30歳になった。
そんな今日も、朝起きて、いつもと変わらない1日を過ごし、誰に祝われることもなく一人寂しく部屋で缶チューハイを飲む。
社会人になってからは、毎年こうだ。
いや、毎日こうだ。
変わり映えない日常。
変えようとも思わない日常。
いつか、なにか起きて、結婚する可能性もゼロではないだろうが・・・
きっと、このまま変わらない日常を過ごしながら、毎年年を取って、そのまま死ぬのだろう。
・・・・・・だとしたら?
今死んでも、変わらないのでは・・・?
3年前に事故で両親を亡くし、兄弟は別にいない・・・
悲しむ人間が・・・いない。
そうか、死ねば良いんだ。
このまま、そのまま。
死ぬなら、せめて、飛んでみよう。
30階建てのマンションの屋上。
セキュリティなんてあって無いような施錠。
たまに、ここから街を見下ろしていた。
飛んだらどれだけ気持ちがいいのだろうと、いつも考えていた。
それも、もう、考えなくていい。
さぁ、飛ぼう。
次、もし、生まれ変わるなら、素敵な人生でありますように・・・。
身の丈以上の柵を登り。
いつもよりも、更に高い位置から街を見下ろす。
あぁ・・・なんて―――――
/ 暗転