プロローグ2~想いを込めて
この大会、周りに助けられながらもほぼ一人で投げ抜いてきたけれど、さすがにさっきの回は危なかった。失点したものの自分でも良く切り抜けたと思う。
私の視線の先には親友“るい”の姿がある。ツーアウト満塁のチャンス。ここで彼女に長打が出ればサヨナラ勝ちだって十分にありえる。
「るい! あなたが試合を決めて!」
私はネクストバッターズサークルから声援を送る。
(大丈夫。るいはやってくれる。この場面でのるいは本当に頼りになる)
初めて、るいと対戦した時もこんな場面だった。合同授業のソフトボール大会、その時の映像が脳裏に浮かぶ。
相手はリリーフで出てきたピッチャー、疲れはまずない。偵察で見た時の印象だと、コントロールはさほど良くないが逆にそれが厄介だ。
(――あっ!)
スリングショットで放たれたボール球にるいが手を出した。幸いにもボールは私の数メートル先のファールグラウンドに転がった。
「るい! 落ち着いて! 今のはボール球よ! 大丈夫! いつものあなたならきっと大丈夫だから!」
私はそう声を掛ける。すると、るいはこちらを見てコクリと頷いた。
(いつものあなた……ね)
試合に負けるかもしれないのに、自分で言っといて笑えてくる。
るいをこんなに信頼するようになったのはいつからだったろうか? 思い返してみても、いつも私が怒ってばっかりで、あなたはそれに言い返してこなかった。それはなぜ? 図星だったから? 違う。気付いていないかもしれないけど、あなたはいつも一生懸命で必死に前に進もうとしていた。そんな広瀬るいだったから、私は一緒にプレーしたくなったんだと思う。
もしここで負けたとしても、本当に悔いはない。でも、それでも……、
(るい! 私たちはまだ夢の途中! お願い! 打って!)
私の願いまであなたに背負わせるのは間違っているかもしれない、それでも、私はあなたを信じてる。
バッターボックスで叫ぶ親友の姿を見ながら、私はそう願う――。