part.0 転生の準備
僕はただ…高校の卒業式から電車で帰ろうとしただけなんだ。
見渡すと何か薄暗い部屋。
そこに1脚の椅子だけが佇んでいた。
…怪しすぎる!
これは放置安定かな…
少しだけ待ってみよう。
短気な奴の仕業だったらその内出てくるだろ。
………
(ちょっと!座ってくれないと何も始まらないんですけど?!)
数分後、甲高い声が脳に響いた。なかなか短気な奴のようだ。
(普通こんな思わせぶりな椅子があったら座るでしょ!?転生の基本すら知らないわけ?)
いや知らんし。
(もういいわ…とりあえず座りなさい。)
いいや、信用できないね!
(あんた罠にかけてなんの得があるっていうのよ。直接脳内に話しかけるの疲れるんだからはやく!)
言われてみれば確かにそうだ。しょうがないから座ってやるか。
「ふう…やっと普通に話せるわ。私は妖精のフィト、あなたのナビゲート役よ。」
おお…何ということだろう。銀髪碧眼、体長8cmぐらいの妖精が見える。
「僕は狂ってしまったのか?」
「狂ってもいなければぼけてもいないわ。これは現実…よ。」
「おい、なんだ今の間は。」
「気にしない気にしない。さて、あなたの名前は初咲 桜、学校の帰りに電車の事故によって死亡、であってるわよね?」
「何で名前しってんだ…って、え?僕死んだの?」
「そのはずよ。でもあなたはもともと死ぬ運命じゃ無かったのよ。巻き込まれたみたいね。」
「なんか…原因まぬけだなあ、もっとこう…かっこいいしにかたなかったわけ?」
「かっこいいってどんな?」
「子供をかばって死んだとか、スポーツカーに全速力ではねられたりとか…」
「前者はともかく、後者はかっこいいのかしら…?」
かっこいいだろ。スポーツカー。
「はい、そんなまぬけな死に方をしたあなたにカミサマからチャンスが来ています♪」
「よくある異世界転生とかいうやつ?」
さっき転生の基本とか言ってたのはそれか。
「そのとおり!しかもあなたの心を読み取り、希望している環境に案内するわ!」
「ほほう、それはそれは、実に美女たっぷりのハーレムなんだろうな。」
「いや、ぜんぜん違うけど。」
え?
「むしろおんなじ年の女の子と会う機会なんて最初一切ないと思うけど。」
「それどんなクソゲー?」
「クソゲーというかハードモードね。」
「そんなモードやりたくないです…」
「あなたが望んでいる設定のはずなんだけどね…。大丈夫!真面目にかなり頑張れば女の子ぐらい生活のついでについてくるわよ。」
「かなり頑張らないといけないのか…」
「当たり前でしょ。異世界転生したからって楽できるとは思わないでよね。」
「あいにく俺が見てきたものは楽してたんでね。」
「それは成功した人。あなたが成功するのはいまから。」
「そうかよ…。ちなみにノーマルモードだったらどうなんだ?」
「なにが?」
「女の子」
「ゴブリン数匹倒しただけで集まってくるわ。」
「楽ってもんじゃねぇ!」
「なら…イージーは…?」
「きっとあなたが嫉妬に狂うから言いたくないわね。」
「どんだけ楽なんだよ…」
「じゃ、早速いきましょ!レッツゴー!」
「おい!モード変更とかは…」
「受け付けておりません!」
はあ、この先どうなるんだ…、