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Eternal Illusion  作者: 七塚 蓮
序章
2/17

『失われた記憶の欠片』

2125年7月16日 沖縄県国防軍那覇基地


さんさんと照り付ける太陽の光が蒼く透き通った海を反射して、海が輝いて見えてくる。

普段なら観光客で溢れ返っていてもおかしくないはずなのに、浜辺には誰一人として存在しない。それもそのはず、この二十二世紀、ただいま戦争の真っ最中である。そしてここは日本の最終防衛線。日本の最後の砦にして、国防軍の主力(南西を防衛する部隊の中での話だが)が置かれている。

 そんな基地の中心に存在する国防軍那覇基地指令室から、まるで虎が唸ったような声が聞こえてきた。


「ふざけるな!! なんで俺が『半永久的人体冷却装置(SHBC)』に入らないといけないんだよ!」


 見た目は十六歳ぐらいで、黒い髪に黒い瞳、中肉中体だが、どこか幼さが残っているその少年は、指令室にいた他の普通の軍人(・・・・・)に取り押さえられていた。

 抑えられ床に伏せられている少年の前に、第二五師団にあるとある部隊の隊長であり、少年の幼なじみ(・・・・・・・)でもある少女が立っていた。

少年は少女をギロリと睨みつけながら、再びこう叫んだ。


「何とか言えよ!! 凛彁りんか!!」


凛彁、それが少女の名前だ。茶色い瞳に同じく茶色い毛を肩の高さぐらいまで伸ばし、美少女という名が似合うその少女は、その顔立ちに似合わないほど無表情で何も答えなかった。

 しばしば無言の時間が流れた後、少年は腹をくくって能力を行使し、少年を取り押さえていた軍人がかけていたベクトルの向きを変換して軍人を壁際まで負傷しない程度に吹き飛ばした。

 次に、自身にかかっていた全てのベクトルを操作し、ダッッ!! とあり得ない立ち上がりをして、その反動で凛彁の胸倉をつかんだ。

 壁際まで吹き飛ばされた軍人たちは

慌てて立ち上がり、能力を行使しようとしたが部屋に置かれていた『能力阻害装置(AI)』によって能力者には必要不可欠である演算が超音波によってうまくできない。勿論少年も同じ条件だが、少年はそれを押さえつけ無理やり演算をしたので、脳へのダメージは計り知れない。まぁ少年の場合はそうなってもどうにかなってしまう(・・・・・・・・・・)のだが。

 凛彁はしばし目をつむってから、こう答えた。


「……これは隊長命令よ。隊長として、これ以上犠牲を出したくないの。あの時の二の舞にならないように。分かっているならさっさと従いなさい。そうでないなら……まぁ、私とあなたの間柄だったら解るわよね」


 少年はどこか悔しそうな顔をしながら、やがて重たい口を開いた。


「……わかったよ。こうなったら実力行使でお前を止めてやる」


 そう言って少年は、ジャケットの内に隠してあった黒色の本体に片面に一本づつ青いラインが入ったハンドガン型の『能力行使支援装置(AEC)』を取り出した。

 それと同時に凛彁も白色のスマートフォン型AECを取り出し、それをもって構えた。

 その光景を見た軍人たちは顔を真っ青にして数秒あんぐりした後、生物的本能が働いてその場から忍び足で出て行った。

 本来ここは止めるべき場面であるが、この場合においてその行動は正しい。

 片や世界に十二人しかいない戦略能力者のうちのトップ『最高支配者(レジストドミネーター)』でもあり、『殲滅犯』の異名を持つ世界最強と言われている少年。

 片やその少年を手駒として扱い、また自分自身も戦略能力者クラスに匹敵するほどの能力者である少女。

 そんな二人が戦ったら、ましては一般家庭のリビングほどの広さしかない指令室でやりあうとなれば、まぁ命の保証は無いと言ってもいい(主に巻き込まれた側として)。

 部屋に残っていた軍人達が出て行くのを確認した少年はやがて凛彁と対峙した。


「こうして戦うのは久しぶりだな。最後にしたのは確か三年前だったか?」

「あの時は初めて会ったばかりだがからさんざん揉め合あったよね。上司である私の命令は無視するし、意見が噛み合わなかったから口論になったりと、私たちって相性最悪だったよね」

「そうだったな」


 二人の間に笑みがこぼれる。

 だがそれは、楽しいという意味ではなく、懐かしかったという意味で、だ。

 一瞬という途方もない間をおいて、少年は告げる。


「覚悟しろよ凛彁。お前のその間違った考えをぶっ潰してやる!!」


 そして少年少女はぶつかり合った。


 それが、今から四千万年前の事である。


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