友達
空は澄み渡るような美しい空、周りは神々しい木々が生い茂り、優しく風が頬を撫でる。
本来なら、日の本の中心に位置する山城の鞍馬山に飛ばされるはずが・・・何故か、東にそれ、比叡山近くに飛ばされているとは、あかん。
「うぅ、、、気持ち悪い・・・おえぇ、、、(レロレロ)」
周りの風景を見て、リフレッシュするどころか・・・最悪の気分です。
蹲り、顔色をこれでもかと青くした女の子が、嘔吐する。
「大丈夫ですか?天子様!」
目に傷のある一匹の鴉が、天子の周りを飛びながら、嘴を開く。
「あわわっ、、、あっわっわわっ、、、」
羽に少し白い線が入った鴉も、天子の周りを飛びながら、嘴を忙しく開く。
「(レロレロ)、、、無理・・・」
ぐったりと横に倒れ、力無く呟く。
「どうやら、崇徳様のお力が弱まった事で、京の鬼門に位置する比叡山の力に、対抗出来ず、引き寄せられたので御座いましょう」
迦楼羅が私の目の前に止まり、話しかける。
「なんで・・・あんた達は平気なのさ、、、」
「そっそれは、元の姿でお分かりになるように、我ら鴉天狗は、山伏の姿をしておりますでしょ?全てが怨気で出来ておる訳では無いのです。山岳修行の末、少し、闇に囚われて外法に走ったが為、この様な姿となったので御座います。なので、この様な場所も不快ではありますが、我慢できない程ではないのです、ただこの様な獣の体に変えていなければ、天子さまと同じような感じにはなるかと・・・」
風子が、申し訳なさそうな顔をして答える。
「ふっ、ふぅこぉ、、、はなっ、はなしがぁ、話が長い・・・(レロレロ)」
「天子様は、生まれたばかりで抵抗力が皆無故、この様なお姿になると思われます」
哀れんだ目であたしを見つめながら、冷静に分析する迦楼羅。
「・・・・・・」
もう駄目だ、意識が遠くなり、目の前が霞始め、声を出せなくなるほど、衰弱する天子。
「あわわっ、迦楼羅、ヤバイです、天子様消えかけてますぅ~」
バタバタと羽を広げ、嘴を開く風子。
「くっまずいな、こうなれば、姿を現してお連れ、、、不味い、誰か来る・・・」
「えっ、でもこの気配・・・人の様で、人に無いはずの、、、」
二匹が話終わる前に、話していた人物が現れる。
咄嗟に天子とその人物の間に二匹は移動し、身構える。
「なっ!」
「子供?」
二匹は目を見開き、幼い子供を見つめる。
「あれぇ?くろいとりさんが、しゃべった?」
首を傾げながら、呟く幼い子供。
「「・・・・・・」」
子供の言葉に反応しないように、素知らぬ顔を浮かべるような仕草で、無言で周りをキョロキョロと見る二匹。
「う~ん、とりさん、おはなしするわけないか・・・あれ?ひと?、、、(ツンツン)」
幼い子供が、天子を見つけて、近づき、指先で突く。
「・・・・・・」
ぐったりとして、今にも死んでしまうような顔をした天子は、反応しない。
「ちんでる?」
「、、、うっ」
首を傾げながら、呟くと微かに反応を見せる天子。
「うごいた?ちんでない・・・でも、きえかけてる」
目を輝かせながら、天子を見つめる子供。
「(ツンツン)・・・おもしろい!つれてかえる!」
天子の服を掴み、引きずる幼い子供。
(何故!あの御姿の天子様を触れるのだ・・・何者だ、あの幼子は・・・)
迦楼羅はその場を離れ、木の枝に止まると心の中で呟く。
消えかけた天子に重みなど無く、幼子に振り回されながら、山をどんどん下っていく。
次第に歩いていた坂道が緩やかになり、平坦になっていく。
「んっ?・・・おもい」
幼子の足が止まり、天子を掴んでいた手を離す。
「おっ、、、おん、、なのこ、に、おもっ、、、いって、いうな・・・」
引きずられていた天子が、口を開く。
「あっ、しゃべった」
目を輝かせながら、天子を見つめる幼い子供。
「ふぅ・・・なんとか生き延びれたわ、、、」
天子が力無く、呟きながら、立ち上がる。
「だいじょうぶ?」
キラキラした目で、天子を見つめる幼い子供。
「うっ、そんな純粋な目で見ないで・・・」
幼い子供から感じる純粋な視線を、腕で防ごうとする天子。
「おねえちゃん?ひと?なまえあるの?」
首を傾げながら、呟く幼い子供。
その一言に、困った顔をして、天子は答える。
「名前は天子よ。う~ん、ちょっと前までは人だったかな、、、」
嘘がつけず、それでいて正体を明かせない天子。
「ふ~ん、あたし、こいちっていうの!」
小市が勢いよく自分の名前を、天子教える。
「小市ちゃんか、いい名前ね。でもあんな山奥に一人で何してたの?危ないんじゃないの?お父さん、お母さんが心配しちゃうわよ」
天子は少し困った顔をして、小市に話しかける。
「・・・おとうさんも、おかあさんもちんじゃっていないの。それにむらにはおともだちもいないから、、、」
下を向いて、呟くように話す小市。
「あっ、ごめんね・・・軽率だった、、、」
小市の答えに、天子は顔色を悪くして、直ぐに謝る。
「けいそつ?いいのあやまらないで、やまにはおともだちいっぱいいるの!うさぎさんや、とりさんや、さるさんがいるの!しかさんもいのししさんもいるよぉ」
キラキラした目をして、嬉しそうに話す小市。
「そうか、良かった一杯いるんだね」
天子も小市に微笑みながら、答えを返す。
「・・・おねえちゃんも、こいちのおともだちになってくれる?」
小市が不安そうな顔をして、天子に話しかける。
「んっ?そんなに改まって言わなくても、もうお友達でしょ」
「!・・・ありがとう」
天子が微笑みながら、小市に答えると、小市は目に涙を浮かべながら、口を開く。
「違うわ!」
「えっ?」
天子の否定した言葉に、驚きを隠せない小市。
「ありがとうじゃない・・・これからよろしくね、でしょ」
膝を曲げて、小市の目線に、自分の目線を合わせて、手を差し出す天子。
「???」
天子の差し出した手を、ジッと見つめる小市。
「ほら、こうするの」
「ほわわっ」
小市の手を掴み、差し出していた手と、掴んだ小市の手で握手する。
「これは、握手よ!これで私達は友達!」
二人が繋いだ手が、眩しいほどの陽の光を浴びて、光り輝いているのであった。