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市公記~外伝~  作者: 女々しい男
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神通力

怨呪の初歩は朧げながら、マスター出来たが、上位呪である怨霊呪は無理ぽ。

才能とか、使える使えないの問題じゃないような気がする。

あれは恨みが積り、積もって、怨みとなり、それすらも積もらせて使える・・・そんな技なのだと本能で理解する。

怨霊呪以上の呪もあるらしいが・・・気にしないでおこう。

父様曰く、人の世で化物とされる者達の中では、怨み辛みの過多で強さが出るらしい。

私が本能で感じた事と一致する。

なので父様が弱くなったと言う事が分かるが、それでもメッチャつおい父様がパワーダウンしてるとは、想像できないわ、、、。

周りを飛び交う鴉天狗達に言わせると、全盛期の半分以上弱くなってるとの事。

ありえんわ、ありえん・・・流石、日の本最強の怨霊だわ。

でも父様に後悔や悲しみが息を潜め、笑顔が出てる事に鴉天狗達は、我事のようにとても喜んでる。

皆、私が父様の心を癒していると、私に話しかけてくる。

そんな事はないと言っても、鴉天狗達は首を左右に振りながら、

「ありがとう、ありがとう」

と泣きながら、笑顔で語りかけてくる。

私は顔を赤くしながら、その場から逃げ出すのだが、そんな環境が私にはとても新鮮で、心が落ち着く。

そんな事を考えてると、父様が笑顔で語りかけてくる。

「どうした?天子や、何か嬉しいことでもあったか?」

「いえ、鴉天狗達に茶化されて、困ってるだけです!」

父様の問いに答えると、笑顔で笑ってくれる父様。

「処で、天子や、お主は怨呪系はどうやら苦手の様だ。もしやとは思うが、神通力の方が良いのやも知れぬ」

「神通力ですか?」

「通常ならば、怨呪系よりも扱いが困難であるし、まだ生まれて間も無いから、無理だと思うが、試してみるか?」

父様は自分で言ってるのに、かなり困惑した感じで話しかけてくる。

「このまま、人の世に降り立てば、たちまち滅せられてしまうのは、目に見えておるからな」

言うのが早いか、動くのが早いか父様は手にした団扇を左右に振る。

凄まじい音と風が辺りを覆う。

「ぎゃ~、、、」

「崇徳様ぁ~こっここではぁ~、、、」

「うわぁ~、、、」

「やるならやるとおっしゃってぇ~、、、」

「、、、くださいぃまぁせぇ~」

周りを飛んでいた鴉天狗達が突風に巻き込まれ、私の視界から消えていく。

「これが神通力の初歩、疾風じゃ」

「えっ、、、これが、初歩・・・」

これは無理、無理!ごっそり岩削られて、岩肌が綺麗な断面にされちゃってる・・・あかん、これあかんやつだ。

「そして、これが、、、」

「父様!もういい、もういいから!ここ壊滅しちゃう!」

「そうか、、、」

肩を落として、悲しげな顔をする父様。

あかん、そんな顔しても、被害は甚大ですよ!

「まっ、見本は見せた。ほれ、この団扇を使ってやってみよ」

そう言って、自分の持っていた団扇を渡そうとする父様。

「でかすぎ、、、」

「おおっそうじゃった、そうじゃった。ほれ、これならば良いじゃろう」

父様は私に渡そうとした団扇を引っ込めると、団扇の端を少しだけ摘むと、切って切れ端を私に渡す。

それでも十分デカイ、あたしの三倍以上はある団扇だ。

持たされるとその団扇に弄ばれそうになる私。

「大きさはお前の思いで変えられる。儂が渡す物は全て、天子の思い描いた大きさになるぞ。但し、本来の大きさ以上に大きくは出来ぬ、小さくは出来るが、小さくすれば、力も弱くはなるがな」

「そうなんだ、では・・・おりゃ!」

優しく見つめる父様に向かって、今貰った団扇を仰いでみる。

(ごぉ、ごごっーごぉわぁぁ~)

凄まじい音と風が団扇から生成されると、直様あたしが父様に向かって、仰いだ団扇から疾風?みたいな物が放たれる。

しかし、先ほどの疾風の比にならぬ程の風が、驚愕する父様に向かって行く。

「てっ、天子ぉーこれは、これは、、、あかんやつだぁ~・・・」

父様があたしの出した疾風に巻き込まれて、あたしの視界から消えていく。

山のように大きかった父様が居なくなり、一人その場で立ち竦む私。

「あっ、やっちゃった。てへっぺろ」

舌を出して、ぺ○ちゃんのようなスマイルを出すしかない天子であった。

それからしばらくして、体中に枯葉を付けた父様が帰ってくる。

「はぁ、はぁ、はぁ、じっじんつうぅ、神通力の素質は儂以上かもしれんな・・・流石、儂の子!」

疲れきっていた顔をしていた父様が笑顔に変わり、私を褒めちぎる。

褒められることに慣れてない私は、どんな顔をしていたのか。

でも、褒められるのってなんだか・・・嬉しいな。

それから一通りの神通力を教えてもらう。

すると、しばらくして父様に吹き飛ばされていた鴉天狗達が戻ってくると一同、その場で立ち竦む。

辺りはあたしが試した神通力の効果で、破壊の限りを尽くされ、荒廃していたからだ。

「親と子、此処まで似るものなのか」

「我らのねぐらが、、、」

「やはり天子様は・・・崇徳様のお子だな、、、」

「新たな世代の波を感じるなぁ、、、」

「あの、崇徳様のお姿・・・あかん」

「天子様には逆らわぬ方が良い、、、」

顔に疲労の色を強く出しながら、口々に呟く鴉天狗達。

中には失礼な事を口走る鴉天狗さんもいるようだが・・・まっいい。

「まっこれなら、人の世に行ったとしても、簡単に滅せられる事はあるまい」

ニコニコと笑いながら、傷だらけの体を引きずりながら、私に話しかける父様。

「じゃ、人の世に行っても良いのですか!」

目を輝かせながら、私は父様に問い掛ける。

「良いぞ!しかし、儂等のおるこの世と人の世では、時間の流れや行き来する際の時間のズレがある。初めて人の世に行くお主では、そのズレは十年はあろう。そして、時を進める事は出来るが戻す事は出来ぬ」

「未来には行けるが過去には戻れないという事ですか?」

「そうじゃ、今の人の世がお市様の歳で六十八じゃから、お主がたどり着いた時は、七十七歳のお市様に会うことになろう」

「この時代ならば、かなりの年齢ですね。行ったら亡くなってたなんて事っ、、、わっなっなっ無いですね!無い無い!」

憤怒の表情をして、凄まじい黒いオーラを放ちながら、立ち上がる父様を見て、急いで言い換える私。

「言葉には気を付けよ・・・滅するぞ、、、」

「、、、すみませんでした」

あかん、これ本気だわ・・・気を付けねば、ちねる!

「後は、誰ぞ!天子の付き添いをしたい者は居るか?」

飛び回る鴉天狗達に向かって、話しかける父様。

「私が!」

「俺が!」

「あたしが!」

「儂じゃ!」

「それがしが!」

飛び回っていた鴉天狗達が、父様に群がる。

「ええっい!煩い!邪魔じゃ!」

まとわり付く鴉天狗を叩き落としながら、叫ぶ父様。

それに対して怯むことなく、突撃していく鴉天狗達。

最後に一人残った片目に切り傷がある鴉天狗が、父様の目の前で頭を下げながら、話し出す。

「崇徳様、俺に天子様を下さい!」

呆気に取られる父様、あたしと見守っていた叩き落とされた鴉天狗達。

「はっ?」

「あっ、間違えました!天子様の付き人となり、御守りの任を下され」

「迦楼羅か、まっお主ならば依存はないが・・・」

「ならば、是非ともお願い致します」

赤い顔をして、父様に直談判する迦楼羅。

「ふむ、迦楼羅だけでも良いが、天子や、お主は誰か連れて行きたい者は居るか?」

父様が私に問いかけると、周りに居た鴉天狗達が、皆で私に視線を向ける。

うっこの視線、連れてけオーラ全開じゃん・・・。

あかんこんなの体験したこと無いから、めっちゃ困る。

誰選んでも、恨まれそう・・・。

そう思いながら見渡すと、一際強い気持ちを感じる視線を見つける。

あっこの子、確か・・・皆から仲間外れにされて、邪険に扱われてた子だ、確か風子とか言ったっけか。

でもあたしの視線に気付くと目を背け、後ろに下がり、皆の中に隠れてしまう。

あれは、昔のあたしだ・・・。決めた!

「父様!あの子、風子ちゃん連れてく!」

風子が隠れたであろう場所を、指で差して叫ぶように父様に伝える。

「何?風子じゃと、あの・・・ダメっ子、風子か?」

驚く父様を前にして、あたしは叫ぶ。

「風子ぉ~出ておいで!」

叫んでも出てこない風子。

「出てこぬではないか、違う子にしたらどうじゃ?」

困った顔をして私に話しかける父様。

「いえ!風子ちゃんがいいのです!出てこい!風子!」

すると下を向いて、震えながら、出てくる風子。

「行くよ!」

「・・・・・・」

体を震わせながら、嘴をカチカチさせる風子。

周りからはお前如きが、身の程を知れとか罵声が飛び交う。

「煩い!」

「「「「!・・・」」」」

罵声を浴びせていた者達が、あたしの声で静まり返る。

「行くよ、風子!あたしを守ってね!」

「!・・・」

下を向いていた風子が、顔を上げて私を見つめる。

「ほらっ!おいで!行こう!」

あたしは前に手を差し出して、微笑む。

「・・・はい、私の命に代えてもお守り致します」

泣きながら、あたしの手を握り締める風子。

「頑張れよ!風子!」

「天子様をしっかりお守りするのだぞぉ!」

「良かったな!ドジるなよ!」

その光景を見た父様、迦楼羅は微笑み、皆が思い思いの歓声を上げるのであった。


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