表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
市公記~外伝~  作者: 女々しい男
3/23

黒箱

それから父様は私に数々の能力を手取り足取り、せかせかと教えてくれる。

「天子や、お主・・・不器用じゃな」

「うっ、、、」

父様が苦笑いを浮かべながら、私に呟く。

父様の教え方は今までに、味わった事が無い程、親切で分かりやすく、それでいて優しく的確に教えてくれる。

それでも、出来ない私。

不器用の域を遥かに超える物覚えの悪さ・・・恥ずかしくて死にたい。

あっ!もう死んでたわ!てへっぺろ。

「ふむ、怨霊呪は殆ど使えぬな。天子や、お主本当に人の世を怨んで死んだのか?少なくとも縛呪位使えるはずなのじゃが?」

首を傾げながら、呟く父様。

「・・・多分」

よく考えたら、怨んではいないのかもしれない。

怨むというよりは、絶望し、諦めた死に様のような気がする。

「天子や、お前は優しいのう・・・お主のような人生ならば、恨み、怨んで生きておっても、怨霊となれる環境であってであろうに、、、あっすまぬ、記憶を覗いてしまった」

父様は私が思っている事を読んだのだろう、顔色が悪い。

まっ大怨霊様だから、元々顔色悪いんだけどね。

子供が悪い事しちゃった、みたいな顔をしてるから・・・。

「別に、父様のせいじゃないし、自分で命絶っちゃった事は突発的で、でもね・・・」

「でもね?なんじゃ?」

あたしが言い淀むと父様が首を傾げながら、問いかけてくる。

「此処に来れて良かった、父様に生んで貰えてあたし・・・嬉しい」

こんなに親身に優しくされる事が、今までなかった。

そう思うとつい、感謝の言葉を父様に伝えてしまい、顔を真っ赤にしながら、父様の顔が見れず、思わず背ける。

「うっ、そんな他人行儀な事は申すな・・・泣いてしまうではないか」

「もう泣いてる」

「みっみるでない、儂の威厳が、、、」

私を思い、泣いている父様を見て、何故か嬉しさを感じて、微笑んでしまう。

「天子の笑顔は、天女のようじゃな。流石、わが娘!」

「もう、知らない、、、」

そんな親馬鹿振りを最大限に押し出してくる父様に押されながら、指導を受けると、なんとなくではあるがコツを感じ始めてくる。

「ふぅこんな感じかな・・・えいっ!」

「おおっ!怨火が出たか!すごいぞ、すごいぞ!天子!」

子供のように、はしゃぎ喜ぶ父様。

「そんなオーバーな・・・父様が出した怨火と全然違う」

あたしが出した怨火は手の平サイズの今にも消えそうな火の玉で、速度もノロノロしてて、とてもではないが、父様が調子に乗って出した見本は半端無くデカく、威力もオシッコちびリそうな程だったのに、あたしの怨火は、父様の出した怨火の片鱗すら感じられん。

「そうではない、体現させられた事が重要なのじゃ。これで最低でも、敵を攻撃する術は覚えたと言える」

「敵?敵なんているの?」

「おるぞ、神仏に仕える者や同業者も敵対すれば、滅の対象になる。滅せられたくなければ、倒すほかない」

「同業者・・・」

「我と考える事が違う怨霊や妖怪、鬼が同業者じゃな。少し前までは、儂に逆らう者など、将門や九尾位であったが・・・今は儂の元を離れ、自由気ままに生きている者もおるな」

キタ━(゜∀゜)━!将門、九尾、超有名な方々じゃん。

「強いの・・・」

恐る恐る聞いてみる。

「強いのう、将門は儂が全盛期の時で五分、九尾は少し我に劣っておったが、今なら簡単に負けるじゃろうな」

笑いながら話す父様、笑い事じゃないし・・・。

「あ奴らは、理由もなく動いたりはせぬから、安心しろ」

あたしの不安を感じたのか、優しげに話しかけてくれる父様。

「あたしって、どのくらいの強さなのかな?」

興味本位で聞いてみた。

「んっ?天子か、そうじゃのう。新米の陰陽師に一撃で滅せられちゃうかな?」

「それって、ダメじゃん・・・」

笑いながら、とんでもない事を言う父様。

「ふむ、仕方ないのう。手の平を開けて、両手を前に出しなさい」

父様の言われた通り、手を前に出す私。

「こっこれは?」

手の平に小さな四角い箱が現れる。

「それはな、黒箱と言う禁器じゃ」

「黒箱・・・禁器」

「願えば、その者が求めたかなり強力な武防具が現れる。ただし現世ならば、一日二回までじゃ。三回目は・・・よからぬものが出る」

「よからぬもの?」

「儂が封印したダイダラボッチが解放される」

「ダイタラボッチ・・・」

「異能の伝承では日の本を作ったと言われる大男じゃ。まっ山は作っておる所は見たことがあるがな」

「大男、、、父様より大きい?」

恐る恐る聞いてみる。

「ほむ、デカイな。今の儂ならば、儂が赤子でダイダラボッチが大きな大人ぐらいかのう」

あかん、それあかんやつじゃん・・・ちねる。

「儂も全盛期の時に滅せる事が出来なくて、苦労して封印したからな・・・出すなよ」

真剣な顔をして、ねんを押す父様。

「もしもだよ、、、もしも出しちゃったら・・・」

「んっ、出しちゃったら?出しちゃった人しか、その箱で再封印は出来ないからな。その箱は一個しか無いから、頑張って封印するしかなかろう」

「頑張れなかったら・・・」

「頑張れなければ、天子はダイタラボッチに滅せられて、封印された事による怒りの捌け口に、目に映るもの全てに、、、八つ当たりするじゃろうな。あやつなら・・・」

遠い目をしながら、話す父様。

手にした黒箱がカタカタと震える。

あかん、これもあかんやつじゃん。

出来るだけ、この箱は使うまい。

怨呪を覚えたらいいんだから・・・頑張れあたし!

それから暫く、怨呪の修行に明け暮れる天子であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ