平成二五年四月一日(月)
妹の入学式であり、姉の誕生日。
父は髪の焦げた姉を車に乗せ病院に来て以来「会議」には行っていないようだった。母は心なしか、妹が倒れる前より、後のほうが数段元気になったように見えた。入学式は桜が溢れんばかりに咲いていた。姉は妹の入学式が終わるとその足で東京に帰っていった。
妹は姉にローズクオーツという石でできたブレスレットをプレゼントすることにした。それはピンクの水晶だった。今まで姉からプレゼントを貰うことはあっても、あまりあげることはなかった。姉は帰ってしまった後に思いついたので、郵送する事になった。妹は東京に送る小さな箱の中に短い手紙を入れることにした。
「おねえちゃんへ
元気ですか。お誕生日おめでとう。
私は今日から大学生になります。大変なこともあるとおもうけど、自分らしく頑張ろうと思います。
ピンクの水晶は幸せのお守りです。この水晶にはお姉ちゃんと私が仲良くなりますようにって、怪しい神様に願掛けしてりますからお姉ちゃんの試験も恋も絶対うまく行きます。私、その神様との賭けに勝ったからね!
お姉ちゃんが選ばなかった人生を私が一生懸命生きます。私はお姉ちゃんみたいにかっこ良く生きることはできないから、尊敬しています。だからいじけないでね。おねえちゃんは、自分のこと、ブスだと思っているかもしれないけれど、本当は私に似て結構美人だよ! 妹より」
妹は佐賀の新しい部屋の窓から外の桜を見やった。三日前に満開だった桜は今散り時を迎えていた。姉はこの桜を見てるかしら、と妹は思った。
東京の姉は桜を見上げていた。東京の桜は今日、満開を迎えていた。姉は桜並木が延々と続く大学の、前の一本道を大学に向けて歩いていた。妹もあの男もこの桜を見ているのかしら、と思った。胸がチクリと傷んだ。
桜は美しかった。大きな幹が二つにわかれ、またその先が二つにわかれ、その別れた枝々が集まって木を形作っていた。その全ての枝を桜の花が覆い尽くしている。さくら、さくら、さくら。
姉は桜の並木をまっすぐに歩いて抜けて行った。




