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三月二九日(金)夕方六時
病院に運ばれた妹を母が看病している。
母は妹が倒れてからつきっきりで妹の看病をしていた。血液をとり、体の中身を写真に写し、様々な粘液を採取して医師に見せ、検査にかけたが、ここ二日、分かったことは、妹はただ寝ているという事だけだった。妹の腕に点滴の針だけが刺さっていた。母は消毒臭い部屋の隅で窓の外を見つめていた。母は昔看護婦をしていた。寝たきりの人間の介護をするのはそんなに辛いこととは思えなかった。しかしそれが我が娘だと思うと考えられないほど気がふさぐ。母は妹の顔にかかる髪を払って、それを見つめた。パパに似た、綺麗な顔だった。母は窓の外に目をやった。パパは今日、会議らしい。先週の今日も会議だった。最近良く会議がある。母は何も言わなかった。止めもしないし、疑いもしていなかった。
母はただ、二〇年前の結婚式の一ヶ月前からずっと続く、毎夜の夢のことを考えていた。




