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トビラ  作者: ふちか
6/7

5部

「さて、信二。誰がクソ野郎だって?」

信二は目の前の人物を見て後ずさる。

今の友真は誰も近づけさせない、近寄らせないそんな雰囲気を纏っていた。

「だ、誰のことでもねぇよ。聞き間違えじゃ無いか?」

「ふむ、そうか。確かに聞こえたんだがなぁ」

そういうと友真は後ろに向かって呼びかけた。

「おーい、今こいつ、真に何て言ったと思う?」

なんで後ろに向けて?

そう思って友真の後ろに視線を向ける。

信二の顔が驚愕を浮かべる。

なぜなら

「「「クソ野郎っ!」」」

それは真と友真のクラス全員。

狭い家に流石に全員は入れなかったのか、少しの人数と後は家の外にいた。

だが玄関は開けっ放しである。

それが声をそろえて言う。

真に向かって放たれた言葉「クソ野郎」と。

友真は満足したように

「だよな」

とつぶやくと信二に向き直った。

クラスの面々に向ける人懐っこい顔ではなく、友を傷つけた悪党に対し般若の顔で信二を見た。

「謝れよ」

「あぁ?」

「あぁ?じゃないよ。謝れ」

「誰に?」

信二はあくまですっとぼける。

友真はすばやい動きで信二の後ろに回ると腕を組み、壁に貼り付けた。

そのときに「グギャ」と鶏の首を絞めたような声がしたが気にしない。

「もう一度だけ言うよ?真に……謝れ」

「グッ!クソっ、退けっ!!」

信二は無理やり友真の腕から逃げ出し、また対峙する。

「誰が謝るかってんだ……」

抑えられていた腕が痛いのか、両腕をぶらんと宙に垂らしている。

「んな、クソ野郎相手にっ」

「真君はクソ野郎なんかじゃないよっ」

その時クラスの一名が声を上げた。

「真君はそんな風に言われる人じゃないよっ!」

流石に不良が怖いのか。

友真の後ろからでしか声を発せないが。

それでも一生懸命に声を張り上げる。

「知ってる?真君がいっつも誰よりも朝早く登校してるの。何してるか分かる?教室の換気したり、黒板をきれいにしたり、花に水やったり!そんな事をずっとやってるんだよ?」

それを堺にみんなが声を張り上げる。「それなら俺も見た!」「あいつこの前登校中にゴミ拾いながら学校来てたぜ?」「いっつも部活でがんばってた」「授業だっていつも真面目に受けてた!」

声を出したらきりが無いくらいに真が学校生活で何をしていたのか出てくる出てくる。

川が何処までも流れていくように言葉は止まらない。

そして友真が静かに告げる。

「知ってるか?真は俺が小さな怪我をした時でも、”死んじゃ嫌だ”って半べそかきながら手当てするんだぜ?なんで、そんな優しいやつが虐められなきゃ行けない?何故傷つかれなければ行けない?」

友真はそう言いながら段々と信二に近づいていく。

それを拒むように信二は後ろに下がる。

ドンっと信二の背中が壁とくっ付いた。

友真はそんな信二の瞳を見つめる。

「俺は、俺達は真に本当に謝るまでお前らを許さない。俺も争いごととかは好きじゃないんだ。だから素直に謝ってくれ」

信二は悔しそうに顔を歪めたがやがて観念したようにため息をついた。

「……しょうがねぇ」

そういうとトビラの前に立った。

「俺だってお前のやってることくらい知ってたさ。だから、お前を標的にした。ただ気に入らなかったんだ。すまない」

そういうとトビラに向かって慣れていないのか不器用ながらも礼をした。

バッと顔を上げると足音をずんずんと踏み鳴らして、クラスの群集を掻き分けて家から出て行った。

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