栄光は金魚の先に
単語→自動改札、金魚、古文書
ジャンル→ダークファンタジー
人が死ぬ。
ざくりと音がし、呻き声が漏れ出るそれは、今この瞬間まで人だったモノだ。
人が死んでいる。
踏みつけたモノからぱきり、と枯れ果てた骨が折れる。
人を殺している。
「いやっ!やめて!来ないでえ!」
追い詰めただけなのに。もうここで終わる命なのに。どう足掻いても無理なのに。
私があなたの命を奪うのだから。
「あなたは持っているの?古文書を」
「持ってないっ!持っていないったらっ!!」
「そう。それは殺してみなければ分からないわね」
さよなら、と呟き、持っていた刀を心臓へ突き刺した。
だらりと力なく地面に倒れる彼女を見つめる。
人からモノになったこの瞬間に古文書を持っていたかが分かるのだ。
「……持っていたのね……」
モノの口から出てきたのは、淡い緑の色をした金魚。
これが古文書なのだ。
金魚を捕まえ、自分の口の中へ放り込む。
味もなければ臭いもない。ただ、自分の体の中に確かに古文書がある感覚がした。
死んだ人間から金魚が出てきたというニュースは、ある日を境にたちまち世界へ広がった。
この金魚は何なのか、なぜ死体から出現するのか、各世界で研究がされようとする中、それを止めたのは超常現象だった。
いたのだ、空の上に。大きな魚が。
高校の帰り道、自動改札を出た瞬間に暗がりを作ったのは、雲でも飛行機でもなく、空に浮かぶ魚だった。
その魚は、ひとつの言葉を残して消えた。
「すべての古文書を、我が子を集めし者に、栄光を」
それが、この世界の狂いの始まりだった。




