第1話 お嬢様は運動音痴です。
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俺―――仕江 枝葉は姫野家に仕える使用人である。今は、お嬢様――姫野 姫代様の専属使用人として働いている。歳は17歳、秀英学院高等学校の二年生だ。ちなみに、お嬢様も同じ高校の二年生で、風紀委員長をしている。が実はどうしようもなくダメな人間である。そんなお嬢様がぼろを出さないようにするのが俺の仕事だ。
前回のおさらいここまで。
・・・
さて、今日も今日とてお嬢様と登校するわけだが……
「なんですか?これ」
「いいじゃ~ん。別に車の中なんだし~」
俺はお嬢様に‘‘充電‘‘という名目で抱き着かれていた。全く、俺じゃなきゃ惚れちゃうね!
しかし、そんな下らないことを言っている余裕はなさそうだ。
学校が近い。
もちろんのぞき見ぼうしの窓ガラスではあるが、やはり心配である。
「ほら、学校着きましたよ?」
俺の呼びかけはどうやら届かないらしい。
仕方ない
「‘‘姫野様?‘‘」
「ひゃい!」
お嬢様は飛び上がった。理由は簡単だ。俺は声色を変えて、女子の声でお嬢様に話しかける。すると、あら不思議!お嬢様は自分の裏の顔がばれたと思い、飛び上がって必死にとぼけようとする。と、いうことだ。
「ほらお嬢様。学校ですよ?」
「仕江。それ犯則にしない?」
「いたしませんよ!」
とまあ、そんなこんなあって俺たちは学校に到着した。校門の前で車を降りた途端お嬢様の雰囲気が変わった。いつものだらしないお嬢様ではなく、秀英学院高等学校風紀院長、姫野 姫代になった。
この変わり身は、もう超能力と言って差し支えないのでは?
なんて、朝、お嬢様に一ミリでも安心した俺が馬鹿だった。
今日の二時間目は‘‘体育‘‘で女子はバレーボールである。
体育
ありふれた普通の教科だと普通の人は思うだろう。
しかし、俺たちにとって、それは地獄の始まりだった。
数年前、お嬢様がまだ中学生だった時に分かったのだが……
「仕江~私が‘‘運動音痴‘‘なの知ってるでしょ~助けて~」
そう。お嬢様は―――運動音痴である。
どれくらい運動音痴かというと……50m走14秒!ハンドボール投げ1メートル2センチ!反復横跳び22回!立ち幅跳び70センチ!全国体力測定最下位!!
という感じだ。
すなわち、めちゃくちゃだ。
「どうするんですかお嬢様?」
「仕江がどうにかしてよ」
「いやいや、無理ですって!流石に女子にはなれないですよ!」
「今までは体調不良で何とかなったけど、毎回は流石に……ね?」
「しょうがないですね……」
奥の手を出すしかないらしい……。
・・・
「姫野様~ファイト~!」
女子からの黄色い声援が姫野に降り注ぐ。しかし、今、女子と共にバレーボールをしている姫野は、俺だ。
‘‘次ジャンプサーブか……うう……疑似胸が重たい……。‘‘
姫野様は割と‘‘大きめ‘‘なのでスポンジを多く詰めなくてはならない……結果、バランス感覚が狂いそうになる。しかも所作もお嬢様にしないといけないというハンデ付きだ。これで5点入れた俺をほめてほしい。
顔は特殊メイク、体系は服。身長は靴で隠す。髪も鬘だ。一応何度かしたことはあるが片手で数える程度だ。この感覚には永遠になれないだろう。いや……なれたくもないな。
結果、俺はいい感じにスポーツ万能なところを見せ、授業を終えた。
ちなみに男子の方で俺は、保健室にいることになってる。実際俺に変装した姫野様が保健室で寝ている。
しかし、問題はここからだ。
着替えである。
・・・
「少し、執事の様子を見て来るわ」
苦し紛れの良いわけでいい感じに抜け出せた。去り際に女子たちが、「優しいんですね!」「流石姫野様!」とか言っていたが、今にも脱ぎそうだったのでさっさと出て来た。
「はぁぁぁぁぁぁ……」
「どうしたのクソでかため息なんかついて」
保健室の前でお嬢様がにやにやしながら話しかけて来た。
「お嬢様のせいですよ?」
「主人のせいにするなんて生意気ね」
「すみません」
「いいわよ。ありがと。よしよししてあげよう」
「結構です!」
きっぱりと断る。すると、お嬢様は口をとがらせて、「ぶー」とうなる。
「そんな顔しても、頭は差し出しませんよ?」
「むーー……」
心底残念そうな顔をするお嬢様に少々困らせられるのであった。
「女子の生着替え見れて鼻の下伸ばしてたくせに……」
「伸ばしてませんし見てませんからね⁉」
どうやらお嬢様は当分機嫌が直らないらしい。
お嬢様の秘密その2:お嬢様は運動音痴です。
お嬢様の秘密その3:お嬢様は嫉妬深いです。
続く
第2話 お嬢様は風邪です。




