業績悪化
ある日一人の悪魔が地獄で昼寝をしていると、悪魔の王がその姿を見て怒鳴った。
「業績が落ちているんだぞ。しっかり働け!」
地獄中がビリビリと震えるような怒声に悪魔はすぐさま飛び上がると、地上めがけて大慌てで走っていった。
そして地上に降り立った悪魔は周りを見回しておやと首を傾げた。人の姿がまるで見当たらないのだ。たしかにいまは夜である。だが、以前悪魔が地上に来たときは人の作った灯りが夜の街を昼間のように照らしていたはずだった。
もしかして、と悪魔は考える。
自分が地獄でサボっている間に大規模な戦争でも起こり、人類の数が極端に減ってしまったのでは?
「そういえば王サマも業績が落ちてるとか言ってたっけ」
しかし業績が落ちているとしか言ってなかったということは少しは生きている人間もいるはずである。その内に見つかるだろうと楽観的に考えた悪魔は、月明かりしかない暗い小綺麗な街をぶらぶらと散策がてら歩き始めた。
するとその内に、1つだけ灯りのついている建物を見つける。
「しめしめ、やっと生き残りがいたか」
悪魔はそう呟くと意気揚々とその建物に入り、そして思わず足を止めてしまった。
その建物には棺のように人が寝ている箱が大量に並び、箱からはなにやらケーブルが伸びて建物の中央にある機械に通じている。
「なんだ、こりゃ」
悪魔はその様子を見て呆然と呟く。すると、誰かが近付いてくる。起きている人がいたのか、と悪魔がそちらに目を向けると、そこにいたのは仲間の悪魔だった。
「お、お前もここに来たのか」
「ああ。ところでこいつは一体全体どういうことなんだ?」
すると仲間の悪魔は肩をすくめると、どうもこうも、と言った。
「人間共は自分の望む夢の見れる機械を作り上げちまったんだよ。いまじゃ起きてる人間なんてほとんどいないぜ」
悪魔は最近業績が悪くなっている理由を理解した。
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